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2011年3月 1日 (火曜日)

EU:Sony対韓国LG電子の特許紛争において,LGの申し立てによる暫定的差止命令が出されたことを受け,欧州関税局がPS3コントローラの出荷を差し止め

下記の記事が出ている。

 European customs ordered to seize PlayStation shipments in legal dispute
 Guasrdian: 28 February 2011
 http://www.guardian.co.uk/technology/2011/feb/28/playstation-3-lg-legal-dispute

SonyとLG電子は,相互に特許侵害で提訴し合っていたのだが,ハーグの裁判所は,LG電子の主張を認め,暫定的差止命令を出していた。今回の関税局の措置は,この暫定的差止命令に基づくものだ。

この紛争がこれからどうなるのかについて注目しなければならない。

(関連記事)

 LG電子、テレビやゲーム機の特許侵害でソニーを提訴
 産経ニュース: 2011.2.8
 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110208/biz11020812300015-n1.htm

 ソニー、LG電子を提訴 多機能携帯の特許侵害
 産経ニュース: 2010.12.30
 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110107/biz11010702520070-n1.htm

[追記:2011年3月2日]

関連記事を追加する。

 PS3 imports banned in patent row
 BBC: 1 March 2011
 http://www.bbc.co.uk/news/technology-12607370

[追記:2011年3月10日]

関連記事を追加する。明確には書かれていないが,Guardianは今回の裁判所の判断が誤判だと考えているのではないかと思われるフシがある。実は私もそう思っている。

 PS3s seized in Sony-LG patent dispute
 Guardian: 9 March 2011
 http://www.guardian.co.uk/technology/2011/mar/09/sony-ps3-lg-blu-ray-dispute

[追記:2011年9月6日]

関連記事を追加する。

 ソニーとLG 特許訴訟で和解 20件以上すべて取り下げ
 産経ニュース: 2011.8.11
 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110811/biz11081119460013-n1.htm

 LGとソニー、激しい特許紛争から和解
 中央日報: 2011年8月12日
 http://japanese.joins.com/article/740/142740.html

***********************************

(余談)

日本では,産総研のような公的機関が新技術を開発し,それを全ての企業にオープンにするということによって,日本の多くの企業が成長することを助けてきた。このようなやり方は,米国に不安を与えないと同時に,当時は低開発国であった韓国や中国にはマネされないだろうという予測を必須の前提としたやり方だと言える。

現在,このやり方は完全に裏目に出ている。

産総研や大学などで公表されたオープンな技術情報をクレームとしただけのものでも何でもとにかく特許出願し,当該国では公知ではないとして特許を認めてしまう特許庁の審査官の審査を経て特許化できる国の企業との間での訴訟維持コストが莫大なものとなってしまうからだ。その訴訟コストは莫大なものであり,普通の企業ではもちこたえられないことが珍しくない。

日本の学者は,単純に,「公知であれば駄目でしょ」で終わりにすることが多い。理論的にはそのとおりだ。しかし,そんなことは企業の法務部の人間であれば誰でも知っていることだ。そうではなく,無効であろうと何であろうと特許侵害を理由に訴訟を提起された場合にどう対応するかが問題なのだ。

これは,学問それ自体が「神の目」でみた世界だけを前提に構築されていることに最大の原因があると理解している(ただし,神の存否については個人の信教の自由に属するので触れない。)。

そして,人間が訴訟を提起し,応訴し,裁くのである以上,「人の目」ではどうなるかということを前提に全ての法学が根本から再構築されなければならない。

その基礎となるものは,あまりにも当然のことながら,「不可知論」とならざるを得ない。「確実なことは何もわからない」ということを必須の前提に法学を講ずるようにできるようにならなければならない。

私は,全法学の基礎を再構築する方向で今後の研究を更に進める。そのための準備作業として「同一性識別」に関する研究をずっとやってきたのだ。

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