大津波に備えたこれからの防災に関する2つの選択肢
今回の大津波はとんでもない被害を発生させた。このことは,あちこちで報道されているし,専門の研究者による調査・研究が進められている。
今後は,いずれまた襲来するであろう大津波に対して対応するために,どのような基本概念に基づいて防災計画を確立するかが重要な課題となる。この点に関しては,既にこのブログでも何度か書いた(「自然災害」のタグで検索していただきたい。)。
その後,いろいろと考えてみたのだが,数学とコンピュータによるシミュレーションの専門家には是非ともやってもらいたいことがある。
それは,次の2つの方針のいずれのほうが妥当かという結論を得るための判断材料を提供するような計算をしてもらいたいということだ。
1) 方策その1(完全な防災)
日本の海岸線全部に高さ60メートルの頑丈な城砦をめぐらせ,50メートルまでの波であれば完全に跳ね返すことができるようにできたと仮定する(地盤沈下等があり得るので,50メートルの高さの津波に耐えるためには60メートル程度の高さの防波堤が必要と考える。)。
この場合,跳ね返された津波はどのような状態になるのか?
跳ね返された津波が近隣諸国(近隣諸国では通常の数メートル程度の防波堤しか設置されていないと仮定する。)に及ぼす影響はどのくらいになるのか?
このような防波堤が三陸海岸だけに設置された場合,三陸海岸は津波による被災を免れることができるが,三陸海岸で跳ね返された津波が三陸海岸以外の海岸(三陸海岸以外の海岸では通常の数メートル程度の防波堤しか設置されていないと仮定する。)に対してどの程度の影響を及ぼすか?
2)方策その2(居住の禁止)
海岸線から一定距離の範囲内については,人が居住してはならないものとする。
この場合,津波の襲来を妨げず,津波のエネルギーが地上部を破壊することにより減少し,ある程度の高さまで遡上して力が弱まる限界点を計算した上で,その部分に頑丈な防波堤を構築する。
防波堤と海岸線との間は,人間が居住することはもちろん,被災によりライフラインの破壊をもたらすような工場などを設置してはならない。
このような方策を用いた場合,日本の海岸にある市町村等では,それぞれ海岸線から何キロメートル陸地に入った地点で津波(今回の津波と同定の津波を想定する。)のエネルギーが衰えるか?
仮に,この方策に従って居住禁止区域を設置した場合,その禁止区域における人口はどの程度になるのか?
小さな入り江のようなところでは地域全体が居住禁止となる市町村も出てくると思われるが,その市町村の数及び面積はどれくらいになるか?
以上を計算した上で,方策1と方策2を組み合わせた防災を考えるのが一番よいと考える。しかし,方策1と方策2を徹底した場合にどうなるかについてのシミュレーションがないと,最大値又は最小値の見当をつけることができない。
正確には,例えば,三陸海外の市町村だけ方策1を実施し,それ以外の市町村では方策2を採用したとした場合,方策1を全く採用しない場合と比較して方策2による居住禁止区域の範囲が相当異なってくるだろうと思われる。
私は,高度な数学を駆使したシミュレーションを実行するだけの能力を有しないので,是非とも専門家にやってもらいたいと考えている。
[このブログ内の関連記事]
都市計画や防災計画において根本から発想を変更しなければならないかもしれない
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-e787.html
| 固定リンク
« GoogleのeBookに関するクラスアクションの和解合意について,独占禁止法違反として無効であるとの裁判所の判断 | トップページ | Global Learn Asia Pacific 2011 - Global Conference on Learning and Technology »
コメント