« 政務費の支出費目のうちインターネット使用料について,原告が違法な支出であることの立証をしていないことから,その部分に関する原告の請求を認めなかった事例 | トップページ | 強気の中国に対する国際的反動 »

2011年3月 9日 (水曜日)

ロクラクⅡ事件最高裁判決

下記の判決が公開されていた。

 最高裁判所第一小法廷平成21(受)788著作権侵害差止等請求事件平成23年01月20日判決
 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110120144645.pdf

[判決理由中の重要部分]

放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。

**********************************

(私見)

以下は,あくまでも一般論だ。

私的利用のための録画は適法である。

私的利用のための録画を他人に代行させることも適法である。

では,個別に録画代行を受け,録画した映像を提供するサービスが存在するとすれば,それはどういうことになるのだろうか?

また,代行内容として,「*年*月から1年分の番組すべて」という具合に包括的な代行(包括委任)がなされた場合はどうなるのだろうか?

一般に,包括委任は,完全に適法な行為として理解されている。

受任者は,まさに委任契約に基づく受任者として主体的に事務処理をするので,その事務処理のために必要な機器類を主体的に管理・維持することは,委任事務の処理のために必須であると言える。

もし包括委任が違法であるとすれば,総合的に判断して,この社会は滅びる。

**********************************

(私見その2)

頭の良い人であれば,この判決でいうような「主体的」という要素によっては「私的利用」と「非私的利用」との間の境界線を明確に描くことなど最初から不可能だということを即時に理解することができるだろう。

むしろ,このタイプの事件では,実質的に損害が発生しているといえるかどうかを基準にして判断すべきだったと思われる。

1)私的に録画をすることは自由だ。録画サービスを利用しないで自分で録画した場合,何も存在がない。録画の代行の場合でも何も損害がない。

2)録画機器等には,現実に録画するかどうかとは無関係に最初から課金されている。

この2つの要素をじっくりと検討した上で「総合的に判断」すると,実は,権利者には何も損害が発生していないことになるし,権利者団体は既に補償金として平均値としての損失補償を事前に受けてしまっているということを明確に理解することができる。

他方で,権利者団体以外の者に対しては決して録画代行を許さないとか,補償金以外の「みかじめ料」を支払わなければビジネスを認めないとかいうのであれば,独占禁止法違反の疑いも検討しなければならない。そして,もしそうであるとするならば,訴訟の提起それ自体が権利の濫用として許されないということになるだろう。

|

« 政務費の支出費目のうちインターネット使用料について,原告が違法な支出であることの立証をしていないことから,その部分に関する原告の請求を認めなかった事例 | トップページ | 強気の中国に対する国際的反動 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 政務費の支出費目のうちインターネット使用料について,原告が違法な支出であることの立証をしていないことから,その部分に関する原告の請求を認めなかった事例 | トップページ | 強気の中国に対する国際的反動 »