プライバシーは幻想か?
ネット上では個人情報の売買が始まっているようだし,Facebookの代表者のようにネット上にはプライバシーなどないと公言してはばからない者まで出てきている始末で,世も末の感が強い。ちょっと調べていたら,面白い論説を見つけた。
On Facebook and Online, Privacy Is Only an Illusion
Media Shift: February 11, 2011
http://www.pbs.org/mediashift/2011/02/on-facebook-and-online-privacy-is-only-an-illusion042.html
「ネット上ではプライバシーを守ることが難しい」という意味であれば,「ネット上にはプライバシーはない」という表現も不当とは言えないだろうと思う。たしかにそうだ。
しかし,ネット上に晒したくないと本人が思っている私的情報を無権限でネット上に流す行為は明らかにプライバシー侵害なのであり,適用可能な刑罰法令があれば処罰されることになるし,少なくとも民事の損害賠償請求を免れることはできない。したがって,「プライバシーそのものが成立しない」という意味であるとすれば,「ネット上にはプライバシーはない」という表現は明らかに間違っている。
プライバシーそのものを否定することも思想信条の自由の範囲内かもしれない。しかし,もそそのように主張するのであれば,その主張者の私生活全てがネット上に常時晒されることになったとしても,一切文句を言うべきではないと思っている。そのような主張者に対しては,プライバシーの侵害もあり得ないのだろうから,どんどん私生活を覗き見され,ネットに晒されても一切の文句を言わないということでなければ言行一致とは言えない。マスコミにしても同じで,取材相手にはプライバシーがないという前提で取材する者は,自分自身のプライバシーを放棄しているのでなければ言行一致とは言えない。けれども,私生活の全てを事細かにネット上に流されても何ら苦痛に感じない者は,ほとんどいないだろうと思う。要するに,そのような主張は,「自分だけは例外だ」という特権意識のようなものが常に伏在していると理解すべきだろうと考えている。そこらへんをちゃんと見抜かないと騙されてしまうのだ。
ちなみに,ネット上では,個人情報の売買ビジネスもあるようだ。これは,本人が同意してなされるものである限り,プライバシー侵害にはならない。しかし,かなりシビアにリスキーな行為だと考える。なぜなら,個人情報を買い取る者の中には,ヤクザやマフィアのような犯罪者集団も含まれていることが明らかだからだ。そのような犯罪者集団の知能を軽視してはならない。中には,どんな企業よりも優れたプロファイリング能力をもっており,ピンポイントで狙った個人だけをターゲットにして,強盗,恐喝,詐欺などの犯罪を実行することになるだろう。要するに,「個人情報を買い取る者には悪人が含まれていない」と思い込んで個人情報の売り渡しに同意する者は,自ら進んで犯罪被害者になろうとする者だと言って過言ではないと思われる。
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