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2011年3月29日 (火曜日)

無教養と不勉強が大震災の際に被害を大きくする

理系とか文系とかは関係がない。要するに,森羅万象に対して好奇心を持ち続け,勉強し続け,教養を積んでいるかどうかが問題となる。

丸山真男の『日本の思想』を引用するまでもなく,タコツボ型のバロックな人間が支配的地位を占めていると,悲惨な結果を招く。

たとえ優秀な若手研究者が真実に近い事実を発見しても無視されることが多い。

 「研究成果を生かせなかった…」貞観地震の研究者
 産経ニュース: 2011.3.28
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110328/dst11032819290055-n1.htm

人間の優秀性をはかる場合に,学位の有無とか学歴・経歴などは一切関係なく,優秀な者は優秀だしそうでない者はそうでないのだが,現実の社会はそうなっていない。カール・オルフの『カトゥーリカルミナ』でも聴きたい気分になる。

ところで,地震や津波を周期で考えることが間違いだということなども何度も書いてきた。平均値としての頻度(確率)に過ぎないので,「明日は巨大地震と巨大津波がやってこない」と断言できる者は誰一人としていない。

 地震を周期で考えるのはやめにしたらどうか
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-3d7b.html

 行谷佑一,佐竹健治,山木 滋「宮城県石巻・仙台平野および福島県請戸川河口低地における869年貞観津波の数値シミュレーション」
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/869-c01d.html

 もし大津波が沖縄を襲ったとしたら
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-40a7.html

 大津波に備えたこれからの防災に関する2つの選択肢
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-fb2c.html

 世界最強の防波堤を破壊した巨大地震・巨大津波の威力-それだけを考えているのでは防災対策として失格
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-5118.html

 震災後の建築基準等の見直しの必要性について
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-c4b8.html

 都市計画や防災計画において根本から発想を変更しなければならないかもしれない
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-e787.html

 油断と逃げ遅れを発生させた心理的要素
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-3750.html

 地震の年表
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-545a.html

ところが,日本の教育では,平均値を重視しているので,非常に多くの人々の思考がおかしくなってしまう。平均値は数字上では存在するかもしれないが,実際にはほとんど意味のない無意味な数字だ。

現実に,過去数年間,スマトラやサモアで大津波があり,とんでもない被害を出したのだが,そのことから日本の防災を真面目に考えた者はほとんどいなかった。「自分とは関係ない」と勝手に思い込んでいたのだろう。しかし,その思い込みには何らの根拠もないということを正しく理解すべきだ。

そして,やはり教養を積むことが大事だ。

現在,貞観の大津波だけが注目されているが,1341年(興国2年)の大津波では非常に栄えた港湾都市が壊滅してしまった。また,寛永の大地震や安政の大地震の際にもとんでもない被害が発生している。幕末の歴史を愛好する人にとっては,安政の大津波の際のロシア船の被災の話はとても馴染みの深いものだろうし,水戸藩の惨状についてもそうだろう。それらを単なる歴史上の出来事として終わりにしないで,現代につなげるような頭脳の使い方ができるかどうかで,その人の優秀性を測定することができる。

 プチャーチンによるディアナ号来航と「安政の大津波」
 http://www.city.shimoda.shizuoka.jp/form1.php?pid=777&ky=&keyflg=1

 十三湊遺跡
 http://inoues.net/ruins/3naitosaminato.html
 
 箕浦幸治,中谷 周
 「津軽十三湖及び周辺湖沼の成り立ち」
 地質学論集 (36), 71-87, 1990-11-30
 http://157.1.40.181/naid/110003025881

とはいえ,もちろん,当時,地震計は存在しなかったわけだし,完全に無人となるまで徹底的に破壊されてしまった集落等では何も記録が残らない。

だから,記録がないから安全だという保障にはならないし,まして,大災害が周期的にやってくるということの根拠とすることもできない。要するに,データに大きな欠落があるという前提でものごとを考えなければならない。

そして,記録がないからこそ「非常に怖い」と思う心をもっていれば,常識人だと判定してよい。

逆に,数字(平均値や確率)だけで,「そんなことはあり得ない」と言い切る者は,決して人の上に立たせてはならない者だと評価してよい。

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コメント

我が国が核攻撃を受けたらどのような事態が発生するか。
我が国の原発が大事故を起こしたらどうなるか。
疾走する弾丸列車が貨物列車に激突したらどのようになるか。

悪夢は見たくない。いつまでも能天気でいたい。
天下泰平の気分を壊したくない。

自分に都合の良いことだけを考えていたい。
それ以外の内容は、想定外になる。

ただ「間違ってはいけない」とだけ注意を与える。
「人は、誤りを避けられない」とは教えない。
「お互いに注意を喚起し合って、正しい道を歩まなくてはならない」とは、考えていない。

もしも自分にとって都合の悪いことが起こったら、びっくりする以外にない。
そして、「私は、相手を信じていた」と言い訳するしかない。だから、罪がないことになる。

危機管理は大の苦手。
だが、ナウな感じのする犯人捜し・捕り物帳なら大好きである。毎日テレビで見ている。

日本語には時制がないので、未来時制もない。
未来の内容を鮮明に正確に脳裏に描きだすことは難しい。
一億一心のようではあるが、内容がないので建設的なことは起こらない。
お互いに、相手の手を抑えあった形である。すべては安全のためか。不信のためか。

問題を解決する能力はないが、事態を台無しにする力を持っている。
親分の腹芸か、政党の内紛のようなもの。
今回の事件はわが国の国民性を色濃くにじませている。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812

投稿: noga | 2011年4月 1日 (金曜日) 02時30分

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