なぜタービン建屋の地下室での修理作業が必要だったのか?
福島原発でついに作業員に重大な被爆事故が発生した。しかも,東電の従業員ではなく,関電工の従業員だ。東電の従業員は,遠く離れた安全なところにしかいないのかもしれない。
被爆した作業員は,タービン室の地下で作業をしていたという。
なぜタービン室の地下での修理が必要だったのか・・・説明は2つしか考えられない。
推理可能な説明の1つは,東電が,福島第一原発を廃炉とせず,回復して再度利用しようとしているということだ。
廃炉を前提とするのであれば,発電用タービンを回復すべき必要性など全くない。
もし東電がいまだ未練にしがみついており,そのために発電用タービンを回復しようとしているのだとすれば,「未必の故意による殺人に等しい行為だ」といった類の批判を免れることができなくなってしまうだろう。
他方,もう1つの推理可能な説明は,冷却装置の配線がタービン建屋の地下室にあり,そこで工事をする必要があったという説明だ。
もしそうであるとすれば,原発事故の際に復旧工事をすることができないような非常に危険な基本構造をもっていたということを明確に証明することになる。ちなみに,大量の水をどんどん注水した場合,あふれた水が地下室にたまることは小学生でも理解できる。そして,その水は原子炉に直接触れた水なので,仮に原子炉に損傷がなくても放射線を帯びるだろうし,もし損傷していればひどく汚染された水になっていることだろう。
つまり,このタイプの原子力発電所施設は,すべて,「もし事故が起きても安全に復旧することができない」という致命的な欠陥を最初からもっていたのだということになる。
もしそのような危ない施設だとすれば,正気の沙汰とは考えられない。
以上,2つの説明が考えられるが,そのどちらなのかはわからない。
わからないけれども,そのいずれであっても,東電の罪はますますもって深まるばかりだという結論だけは変えようがないだろうと思う。
さっさとセメントとホウ素と鉛を投入して巨大なコンクリート塊としてしまうべきだ。
[追記:2011年3月26日]
報道によると,タービン建屋地下室の配線を修復しないと冷却系の電源を回復できないとのことだ(←説明それ自体が最初から嘘である可能性は否定できないが,判断材料に乏しいので判断できない。)。
これで,建物の設計それ自体に重大な欠陥が最初からあったことが実証されたことになる。設計者の責任は極めて重い。
それはさておき,冷却系への電源供給は,外側からでもできるはずだ。建物内の配線をあきらめ,全く新しい経路で電源供給することを考えなければならない。
固定観念に固着していると,旅順要塞の攻略ばかりに固執し,大勢の将兵を無駄死にさせてしまった乃木将軍と同じ誤りを犯すことになる。旅順要塞攻略の目的は,観測点を確保し,旅順港に停泊中のロシア艦隊を陸上から砲撃して撃破することにあったのであり,旅順要塞を守備するロシア軍を降伏させる必要は全くなかった。しかし,乃木とその参謀はこだわった。だから無駄に多数の犠牲者を出した。目的と手段の相違がわかっていなかったと言える。このような状態は,既に立身出世を遂げていたのに自ら望んで降格した上で指揮官となり,軍務に服した児玉源太郎によって状況が打開されるまで続いた。
現在,福島原発で起きていることは,旅順要塞攻略戦と非常によく似ている。指揮官が無能なのだ。
要するに何が目的なのかを考え,既存の設備の回復は諦めて,本来の目的達成のためだけに全精力を集中すべきだ。そうすれば,自然と全体としての困難も打開の目処がたってくるだろう。
旅順要塞攻略戦でも,203高地を奪った小隊からの観測結果に基づいてロシア艦隊が撃破されると,守備していたロシア軍も守備すべき目的を失い,それ以上戦闘を続けることが無駄だと悟り,降伏することになった。
福島原発でも,とにもかくにも冷却系の電源を回復すれば,現在の困難を打開する目処がたつ。
にもかかわらず,汚染された水を地下室から汲み上げることにこだわっていると,更に犠牲者を増やすことになるだろう。
なお,原子力の専門家の責任も大きい。テレビ報道で解説をする際,原子炉には破損がないだろうという期待に基づく解説ばかりしていた。もし最悪の事態を前提とする意見を出していれば,事故直後の対応も大きく異なるものとなったろう。
私見としては,現場における指揮権をすべて自衛隊に一元化し,米軍等の協力を得て,作戦として作業を進めるのが一番良いと思われる。資産の減少を怖れる気持ちが少しでも脳裏をよぎる可能性のある東電等から全ての指揮権を奪うべきだ。緊急事態なので,仕方がない。東電の正規従業員としては,もともと電気料金の計算をするような事務職員が圧倒的に多いのだから,復旧作業には一切口出ししないほうが良い。
[追記:2011年3月27日]
関連記事を追加する。
高濃度の水漏れ、配管原因か 循環復旧長期化の恐れ
産経ニュース: 2011.3.26
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110326/dst11032622400092-n1.htm
[関連記事]
最新原発なら福島事故は無い?(1)
ナショナルジオグラフィック: March 25, 2011
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110324001&expand
最新原発なら福島事故は無い?(2)
ナショナルジオグラフィック: March 25, 2011
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110324002&expand
[このブログ内の関連記事]
福島原発の原子炉には最初から構造上の問題があったようだ
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-d125.html
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http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-a598.html
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