世界最強の防波堤を破壊した巨大地震・巨大津波の威力-それだけを考えているのでは防災対策として失格
下記の記事が出ている。
ジャンボ機250機分の波、世界一の防波堤破壊
Yomiuri Online: 2011年3月21日
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110320-OYT1T00777.htm
要するに,想定していたより以上の大きな津波が来てしまったということが書かれている。
「想定」という点に関しては,想定した人間の想像力に重大な問題があることはこれまで何度も指摘してきた。自己過信はよくない。自分の思考能力と想像力には限界があることを素直に認め,どんなに有名でない学者が書いたものでも関連する論文を丹念に読み,謙虚に耳を傾ける姿勢が必要だ。決して,学者は,決して企業の要望に迎合してはならない。適切にアドバイスをするのが学者の任務だ。
ところで,今回の地震では,津波の威力もさることながら,振動が非常に大きかったことと大規模かつ広範囲に地盤沈下が発生していたことも重視すべきだと思う。このことも何度も書いてきた。
例えば,最も単純化して言うと,10メートルの防波堤であっても,3メートル地盤沈下すれば7メートルの高さしかないことになる。
今後の防災対策では,予想される津波の最大の高さが10メートルである場合,10メートルで足りるとせず,地盤沈下の可能性も考慮し,10メートルに3~5メートル程度以上積み増した高さでもって適正と判断するようにすべきだと思う。
そして,地盤沈下した地域では,地震がやみ,津波の心配がなくなっても,通常の波の力による破壊力が地震前よりもかなり増加する。波の破壊力については,地学を選択したものであれば高校で誰でも習うことだ。したがって,津波の去ったあとにおいても当初想定していたよりも早く壊れた防波堤等の破壊・崩壊が進行することになる。このことも忘れてはならない。
そして,このことは,海浜だけではなく河川の管理にも非常に大きな影響を与える。地盤沈下により,満潮時に河川を遡る海水の量及び地域が相当異なってしまうからだ。これまでの満潮時における平均水位等に基づく河川管理計画は,いったん全部ご破算にした上て,最初からやり直すべきだろうと思う。
地盤沈下の可能性は,太平洋岸であれば,どの場所においても肯定できる。過去において隆起する傾向のあった場所では,とりわけ大きく地盤沈下する可能性がある。そして,埋立地では,そもそも地盤がいわば泥のようなものだから非常に弱い。これらのことから,海浜では基本的に地盤沈下や波力により土地それ自体が全面的に崩壊してしまう可能性があることを前提に,防災計画をたてなければならない。
ちなみに,災害大国である日本としては,広い意味での防災対策の一貫として,地学を中学及び高校の必修科目とすることを検討すべきではないかと思う。文部科学省に要望したい。
[追記:2011年3月25日]
関連記事を追加する。
ポンプ20台で排水、不明者捜索へ 津波で水没の南相馬市
産経ニュース: 2011.3.25
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110325/dst11032511470023-n1.htm
[このブログ内の関連記事]
国土地理院:東北関東大震災により移動した東日本の水平・垂直の変動を示す資料
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-e435.html
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