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2011年3月27日 (日曜日)

油断と逃げ遅れを発生させた心理的要素

今回の地震では,大丈夫だろうと思って逃げ遅れ亡くなった方が少なくない。ご冥福をお祈りしたい。

将来,再び同じ惨禍を招かないために,その心理的要因についてちょっと考えてみた。

1) 直線に発生した大地震では大きな津波が発生しなかった

これは相当大きな要因ではないかと思う。3月11日に地震が発生した際,「たいした津波は来ない」と即断してしまったとしても無理はない。

 三陸沖で地震、東北地方太平洋沿岸に津波注意報 3時間後に解除 ‎
 AFP: 2011年03月09日
 http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2789510/6932343

2) 防災施設に対する信頼の過剰

これも大きな要因ではないかと思う。しかし,世界最高レベルの防災設備であったことは事実で,信頼し過ぎてしまうほど信頼してしまうのも無理はない。

 日本一の防潮堤を過信 岩手・宮古市田老地区「逃げなくても大丈夫」
 産経ニュース: 2011.3.27
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110327/dst11032700080001-n1.htm

しかし,私には別の記憶もある。

岩手県出身である私は,三陸海岸に何度も出かけた。どこでも立派な防波堤が構築されており,通常の津波であれば完全にブロックできることを即座に理解することができた。けれども,その防波堤や堤防などよりもずっと高い位置にある岩肌などに表示があることにも気づいた。そこには,かつてここまでの高さの津波が来たことがあることが示されていた。おそらく,明治の大津波やチリ地震津波などの際に押し寄せた巨大津波の高さを示しているのだろう。だとすれば,どうしてその高さまでの堤防や防波堤などを構築しないのか,いつも不思議に思っていたのだった。巨大津波による被害を避けるために必要な高さは,実際に存在していた10メートル程度ではなく40メートルだったのであり,地盤沈下を考慮に入れると(本当は)50メートル程度の高さの頑丈な防波堤や堤防などを構築しなければならなかったのだ。おそらく,その岩肌の表示は現在でも残っているはずだし,住民は毎日目にしていたはずだ。けれども,巨大な防波堤の姿による幻惑効果により,過大な期待と過信をもってしまったのではないかと想像する。

3) 自動車に対する過信

自動車に乗って逃げようとして逃げ遅れた人がたくさんいる。

自動車教習所の教本には,「地震があったら自動車に乗っているのは危険」と書かれているし,「緊急車両の通行を妨げないよう,道路の脇に自動車をとめて自動車から出なければならない」とも書かれている。そして,これらのことを丸暗記しなければ,仮免許を取得することができない。だから,誰でもみんな知っていたはずだ。それでも,決して安くない自動車を置き去りにすることには抵抗感があっただろうし,自動車のほうが速く移動できると考えたのだろう。

しかし,多くの人が自動車で逃げようと一斉に判断すると,(当然のことながら)集中による渋滞が必ず発生し,自動車は身動きのとれない状態となる。つまり,自動車を捨て,最も高いと思われる高台に向けて全速力で走ったほうが助かる可能性が高い。

4) 高齢者が多かった

過疎地等ではどこでも発生している社会現象だ。過去に津波の被害を経験している地域でも,高齢者は住み慣れた場所や家で暮らしたいと考えるのが普通だ。別の場所に移動すれば,昔からつきあっている近所の人々や友だちなどと疎遠になってしまうことが大きな心理的なダメージとなってしまう。だから,住み慣れた場所を離れることができない。悲しいことではあるが,誰を責めることもできない。

以上のような要因を考えた。

もちろんこれだけではないだろう。

今後の防災計画の再検討に際しては,防災施設の物理的な構造だけではなく,現実に大きな震災が発生した際の住民の心理のようなものについても十分な調査・研究が必要なのではないかと思う。


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 女川原発の放射線監視施設も壊滅的打撃を受け,測定不能になっていた
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-9e3c.html

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