輪番停電から考える社会構造の変化
明日から輪番停電が開始される。やむを得ない措置だろう。
ただし,このことからしっかり認識しなければならないことがある。
それは,「電気をふんだんに利用できる社会は終わった」ということだ。
現在の電力供給の多くは原子力発電に頼っている。しかし,福島原発のトラブルにより,供給量が大幅に減ってしまった。今後,原発反対運動が勢いづくかもしれないことを考えると,電力供給量が更に大幅に減少するという事態を予測しなければならない。
その結果,電力を基本的に利用できない社会というものを想定しながら近未来を構想しなければならないことになる。
1)電気自動車など大量の電気を要するものは利用できない
2)インターネットや携帯電話など電子的な通信手段は基本的に利用できない
3)電子処理を要する業務や作業は基本的に利用できない
4)テレビは基本的に視聴できない
5)電気による保冷を要する業務(冷凍食品や冷蔵食品の供給を含む)は断念せざるを得ない。同様に,家庭では,一週間分の食品を買いだめし,冷蔵・冷凍しておくことが基本的にできなくなる。
6)温度や湿度などを一定状態を保つための機器類を用いた仕事(動植物の育成・培養・栽培を含む。)もできなくなる
7)商品の在庫管理や配送などの通信回線の利用を必須の前提とする業務も基本的にできなくなる
8)ファクシミリ兼用電話機等は基本的に使えなくなる
簡単に言うと,「ユビキタスネットワーク社会」なるものを前提にした社会システムは,あと数時間で根本的に否定されることになる。
この影響は非常に大きい。
仕事も変化する。
例えば,私の場合,ノートPCを用い電池がゼロになるまで原稿を書くことはできるが,インターネットを参照したりメールで送受信したりすることができなくなるだろう。なぜなら,ルータへの電気の供給ができないからだ。
自家発電能力(太陽電池,内燃機関による自家発電装置等)のあるところでは少しは余裕があるかもしれない。しかし,例えば,自分のところには電気があっても相手方が停電であれば,やはりメールの送受信ができない。もし自分が利用しているプロバイダが停電になっているなら,同様に何もできない。
パブリッククラウドにしても同じで,もしプロバイダに自家発電能力があっても,自分のクライアントマシンを動かすことができなければ,仮想サーバにアクセスすることができなくなるから,自分のところには何もなくなってしまうことになる。仮想サーバを利用していなければ,電池駆動が可能な限り,手持ちのノートPCで仕事をすることができるだろうが,100パーセントパブリッククラウドに頼る環境では,サーバ側だけにリソースがあるので,自分が停電になると全てのリソースが利用不可能となってしまうのだ。
同様に,電子政府や電子自治体のシステムが稼働していても,停電中の地域に居住する者は(ルータを動かすことができなくなるので)一切利用できなくなる。同じく,インターネット上のサイトでの予約等もできなくなる。
電子書籍にしても,ダウンロードできるタイプだとしても,通信回線を介した電子認証を要するコンテンツについては認証不可能な状態では何も読めなくなってしまうだろうと思う。つまり,通信に頼らない認証方式を開発しなければならないということになる。
このようなことを考えると,結局は,電気がなくても仕事ができるように仕事のスタイルを変化させるしかないということになる。
ちょっとだけ良いことは,通信回線を介したサイバー攻撃を受ける可能性が物理的に消滅するということはある。もちろん,セキュリティソフトのリアルタイム更新ができなくなってしまうというデメリットもあるけれど,通信回線を利用できない時間帯については,攻撃があり得ないということはありがたいことだ。
とりあえず,今晩中にやっておかなければならないことは,連絡する必要のある相手について,その電話番号を確認し,メモに書いておくことということになるだろう。駅まで歩いていけば,公衆電話から電話をかけることくらいはできるだろう。
その他いろいろと考えなければならないことが山ほどある。追って書きたいと思っている。
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(余談)
私の住む地域では,昼間は停電になるが,夜間はどうにか使えそうなので,昼間に寝て,夜に仕事をするという「水商売」のような生活スタイルに変更せざるを得ない可能性がある。
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