IDでないものをIDと考えるのはやめよう
国民番号制度などについて議論がある。
このブログでは,本人確認等についていろいろと私見を述べてきた。
異論もあろう。
しかし,論理的につきつめて考えるということをしないと制度設計を誤ってしまうので,多少辛口の意見であっても,今後も私見を述べることにする。
基本は,「IDは成立しない」ということに気づくことにある。
国民番号や健康保険証番号は,ある個体に対して付されたIDのように見える。しかし,それは,単なる属性値をたばねるシンボルに過ぎない。つまり,あるサービス等を受ける法的地位にあることを示す様々な属性値を統一的に示すシンボルではあっても,その個体のIDではないのだ。
IDという名が付されているので,IDだと誤解してしまうことが多い。しかし,属性値に過ぎないことを理解すべきだ。
そして,IDは,常に「空」であることも理解すべきだ。
データベースでは,レコードのIDがあり,それによって個体を識別することができるようになっている。しかし,それは,レコードのIDなのであって,個体それ自体のIDはいつまでたっても「空」であることを理解すれば,私見がいかに正しいかを理解することができるだろう。
つまり,完全な意味での「本人確認」は永久にできない。
ある場面において,属性値集合とのマッチングを実行し,マッチングしているかどうかによって,「本人だろう」と推論することまでしかできないというのが限界なのであり,そこでは確率論しか存在しない。
これまで述べてきた私見をまとめると,上記のようになる。
本人確認と関連する原稿をだいぶ前に書いて提出したのだが,その書籍が刊行される可能性がなくなってきたので(たぶん,他の共著者は原稿を書くことができない。),この記事を書くことにした。
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