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2011年3月 5日 (土曜日)

クラウドコンピューティングに関してCIOが3つの誤解をしているとの指摘

下記の記事が出ている。

 Misconceptions about cloud computing
 Financial Times: March 3 2011
 http://www.ft.com/cms/s/0/6bee526c-45a6-11e0-bc94-00144feab49a.html#axzz1FhfXudjy

この記事の中では,Microsoftのバルマー氏の発言を引用している。すなわち,クラウドの導入により,世界中で,10~15パーセントの人々が新たに失業者になるとの発言だ。

クラウドによるコスト削減で最も効果があるのは,おそらく人員削減による効果だろうと思われる。その人員削減には,上級エンジニア,監査法人,顧問弁護士事務所等の高度に知的な職業も当然含まれる。この点については,このブログでも何度も指摘してきたことだ。

これは,喜ぶべき未来像だろうか?

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(余談)

私見が理解しにくいという読者もあるかもしれないので,付言しておくことにする。

最も最適化された状態を想定してみると,人件費というコストがゼロの状態があり得る。つまり,1人の経営者とロボットだけで企業が成立している場合だ(会社組織である必要もなくなり,個人経営で十分な状態となる。)。

このようにしてコスト削減の目的を究極まで達成してしまう企業が全てになった状態を更に想定してみると,労働者が1人もいない状態となる。

すると,労働者は収入を得ることができなくなるから,顧客となることもできない。

要するに,企業だけあって顧客がゼロの状態になる。要するに収益ゼロとなる。

労働者が存在しないので所得税がゼロとなることはもちろんのことだが,個人事業者や法人がゼロとなる結果,税収もゼロとなる。そもそも公務員の世界でもコストゼロを達成していると,ロボットだけ存在していて労働者(一般公務員)はゼロになっているはずなのだが,税収がゼロになる結果,国務大臣等に対して報酬を支払うこともできなくなるから,国の組織を一切維持できなくなる。

その結果,コストゼロ社会では,社会全体が崩壊することになる。

本当は,高コスト社会のほうが幸福な社会なのだ。

ここまで極端な状況を想定するのは若干無理がある。しかし,コスト削減をすれば製品やサービスの単価も低減することになるので(低価格競争),結局,企業の収益は改善しないまま税収だけがどんどん減少するという事態が発生する。そして,どの国でも国としての組織を維持するのに必要な税収を得られなくなってしまうことだろう。

要するに,コスト削減=収入増加という構図が単純に成立すると考えるところに最大の問題がある。現実には低価格競争が発生するので,コスト削減をしても単純に収入増加となることはない。社会全体の活気が失われるだけだ。

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コメント

カイさん

コメントありがとうございます。

クラウドの関係でコスト削減というのは,人件費や外注費の削減のことを指すことが多いです。

究極的には,社長ひとりしかいなくて,あとは全部借り物みたいな状態になるんじゃないかと想像しています。

そうなるとその社長以外には収入を得る者がいなくなり,結果的に顧客が成立しなくなるので,産業界全体が全滅ということになるのだろうと思います。

コストというものは,実は社会全体を成立させているものであり,経済取引が可能な環境を成立させる一番重要な要素です。だから,「コスト削減」は,それ自体として,経済取引が可能な環境の維持とは矛盾するものだと思っています。

高コスト社会のほうが,全体としては幸福だと言えるでしょう。

投稿: 夏井高人 | 2011年8月24日 (水曜日) 05時35分

通りすがりで失礼します。機械化や情報社会化で失業者が増えるのは、利便化の裏で必ず起きてしまうようですね。メリットだけに目を奪われてはいけないと感じました。多くの企業がクラウドを導入するのはコスト削減と柔軟性の獲得の要素が強いようです。(参考 http://bit.ly/iIhZ8z

投稿: カイ | 2011年8月24日 (水曜日) 04時00分

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