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2011年3月19日 (土曜日)

ゴールドマンサックスの元従業員に対し,株式の高速トレーディング用ソフトウェアを盗み出した罪により拘禁刑8年の判決

下記の記事が出ている。

 Programmer gets 8 years for theft of stock trading software
 Register: 18 March 2011
 http://www.theregister.co.uk/2011/03/18/programmer_sentenced/

この種の事件は,単に発覚していないというだけのことで,実際にはもっとあるのではないかと思われる。

なお,上記の事件とは無関係なことだが,一般論として,古典的なサラミテクニックのような手口を用いた犯罪行為が現在でも実行されることがあり得る。この場合,システム内に仕込まれたプログラムが隠れた脆弱性要素となることがあるので,十分に注意しなければならない。

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コメント

石井佑基さん

震災後のキーワードは,最適化の否定であり,それは,防災性と冗長性によって確保されると考えています。

いわゆる事業仕分けも,わけのわからない人にやって実施される場合,単に最適化を追求するだけで,一般的にはフェイルセーフの切捨てしか意味しないことになってしまうことが多いので,基本的には駄目なやり方です。

無駄のない社会は脆弱ですし,死滅する確率が高いです。

現に,今の東京の状況を見ていればそのことを明確にご理解いただけると思います。

銀行だけの問題ではありません。

投稿: 夏井高人 | 2011年3月24日 (木曜日) 05時27分

システムの最適化が脆弱なシステムを作ってしまったことについては私も同感です。みずほ銀行はシステム統合のときにも問題を起こしているのに、再び起こすというのは大きな問題を抱えていると思います。

折角通帳記入が出来てもまたトラブルが合ったようで、お察しいたします。信じられないような不手際に私も唖然としています。

しかしながら、行員の対応が銀行のコンプライアンスに則ったものかどうかは会社が違うということもあり分りかねます。同一グループの人間として申し訳ない思いでいっぱいです。

投稿: 石井佑基 | 2011年3月23日 (水曜日) 21時16分

石井佑基さん

自宅の近くにはみずほ銀行の店舗がありません。ガソリンスタンドがようやく営業しはじめたので給油のついでに取手支店まで出かけて通帳の記入をしてきました。

驚いたことに,給与が二重に振り込まれていました。使うわけにもいかず,銀行員に問い合わせたところ,後日,「返還の通知が届くはずなのでそれまで待ってくれ」とのことでした。

利息はとらないと思いますが,困ったものです。

なお,同じ行員の説明によると,別の銀行に依頼して振込み代行をしてもらったために発生したらしいとのことでした。詳細は,支店レベルでもよくわかっていないようです。しかし,仮に振込み代行で発生したとした場合,個人情報保護法における保有個人データの第三者移転の例外の場合に該当するかどうか若干の疑問があります。

なぜなら,今回のシステムトラブルと震災との相当因果関係は証明できないでしょうから(現に他の銀行のシステムは健全に稼働している。),みずほ銀行に固有の原因に基づくもとして理解するしかないからです。

法務のほうではちゃんと検討しているのでしょうかね?

投稿: 夏井高人 | 2011年3月23日 (水曜日) 12時12分

石井佑基さん

コメントありがとうございます。

でも,石井さんに責任は全くないですよ。

責任があるのは経営陣です。

妙な理論にふりまわされて「最適化処理」をやり続けてきた結果,最も弱いシステムになってしまいました。

私は,冗長性と非単調性をビルトインしたシステムでなければ駄目だと信じています。経営それ自体もまた同じです。そして,迅速・確実な判断をするということと矛盾なく両立させるため,凡庸またはちょっと優秀な程度の人間が経営者になってはいけません。

みずほに限らず,「効率化」と「集中化」ばかり追い求めてきたこれまでの企業や政府の姿勢には重大な問題があります。また,それを支持してきた学者らも同罪です。

金本位制への復帰は,現実には相当難しいと思います。しかし,金でなくても何か価値ある物体との兌換性を回復しないと,いつまでも投機とバブルが繰り返されることは間違いないです。

経済学者は,このような簡単なことを素直に認め,単純な経済理論を構築することに努力すべきでしょう。しょうもない金もうけシミュレーションばかりやっているようでは,経済学者の名が泣きます。

投稿: 夏井高人 | 2011年3月21日 (月曜日) 13時11分

みずほ銀行の件では多大なご迷惑をおかけしております。誠に申し訳ございません。

私自身も管理通貨制度よりも兌換通貨制度、それも金本位制が物価の安定、及び過剰なバブルの抑制に非常に効果的であると思っています。現在の経済制度から移行するには様々な障害がありますが、そこは手段が無いわけではないと確信しています。

投稿: 石井佑基 | 2011年3月21日 (月曜日) 12時55分

石井佑基さん

おっしゃるとおりだと思います。

私見に対しては,「それでは通貨を否定することになるのではないか」との批判があります。

そのとおりです。

しかし,通貨と言っても金本位の兌換券であれば金と交換可能なバウチャーとして機能しますから,期待値だけではありません。兌換券であることをやめてしまっているから期待値だけになってしまうのです。

期待値を単なる期待値でなくする唯一の方法は,その期待値が現実に存在する物資と確実に交換可能なバウチャーとして機能するかどうかにかかっていると考えています。そうすることが不可能な期待値は,やはり純粋に期待値のままです。株式はその典型例だということができるでしょう。

なお,みずほの件については本当に参ってます。私は,主要な銀行としてみずほを利用しているので,何もできなくなっており,下手をすると破産し餓死するしかないかもしれません。幸い,私の自宅には庭があり,食料になる植物を植えてありますので,最悪の場合にはその根を掘り出して食べれば餓死を免れることができるでしょう。でも,都会に住む人の大半はそうではないです。そして,クレジット払いで物品を購入するにしても,もし1ヶ月以上トラブルが続くとなるとクレジット代金の引き落としができなくなるのでクレジットカードを使うことが一切できなくなるだけではなく,ブラックリストに記録されてしまうことになります。報道によれば,口座の取引高の設定誤りが原因ではないかとの指摘があります。もしそうであるとすれば,完全に債務不履行ですね。妙な評価理論に基づく最適化処理など一切やめてしまったほうが良いです。浅知恵に近い行為だと評価します。人間の行動を予測することなど誰にもできません。人間の行動が予測できることを前提とする最適化処理理論は,すべて思い上がりと無知・無教養の産物だと考えています。私がこのブログで自動プロファイリングを批判する理由のひとつはこの点にあります。今回のみずほの事故により,自動プロファイリングが極めて危険なものであることを実証できてしまったと理解しています。

とにかく,1日でも早くトラブルを解消して欲しいです。

投稿: 夏井高人 | 2011年3月20日 (日曜日) 06時10分

お返事ありがとうございます。余震もまだ続いていますのでお互いに注意してまいりましょう。みずほ銀行のシステム障害は本当に申し訳ありません。しかし私はみずほ系の会社に居るのに他行を給与支払い口座にしているので未だに影響なしです。

高速取引だけでなく、ディーラーが扱う銘柄も似通ったものが多いです。先生のご指摘のとおり、株式の価値というのは将来への期待値なので、実態がありません。故に株価は付いていても、実際に取引できる流動性があるかないかは人気や注目度に依存します。従って、超短期で鞘を抜くためには流動性が十分にあり、極力価格のボラティリティが少ない銘柄を狙うことになります。こういった銘柄は極わずかなので誰が作っても似たようなプログラムになってしまいます。そのことも違法コピーが横行することを助長しているのだと考えています。

余談ですが、こうしたHFTは下げ相場では蜘蛛の子を散らすように居なくなります。何故なら空売りを行う際に発生する貸し株料が収益を圧迫するので一斉に手仕舞って指値をキャンセルするからです。こうなると一気に流動性が枯渇し、市場がクラッシュしてしまいます。

欧米では機関投資家がHFTを嫌って主市場を利用せず、市場外で取引をすることが多くなりました。今後主市場は投機的取引の場で、長期投資家は相対取引という方向に進むのかもしれません。これはこれで間違っていると思います。

私は現在は証券取引や現在の経済理論には賛成です。何故なら、私も含めて人は弱く、不完全で、漠然とした恐怖があります。それゆえに将来への期待や欲望が必要です。だから証券投資やバブルが起こるのだと考えています。しかし過分に膨らみすぎた金融市場はただの危険物だと思うので、今の会社の面接のとき面接官に風船は永遠に膨らみ続けられないと思いますと言いました(笑)。

いつの日か人類が精神的にも進歩した時にはきっと足を知り、穏やかに生きていくのでしょう。しかしそれまでは人は何度も同じ過ちを繰り返すのだと思います。そして危機が起こった場合に対応するためにも多様な考えや思想が必要だと思います。しばらくはその繰り返しが続くのではないでしょうか。

投稿: 石井佑基 | 2011年3月19日 (土曜日) 22時22分

石井佑基さん

地震のほうはどうにか耐えました。ところが,みずほのシステムがおかしくなってしまってしまってます。家の屋根が壊れたり,子供が進学したり,税金やら何やらを支払ったりとお金のかかる時期なのに,どうにもなりません。ローンの自動引き落としもできそうになく,体調の悪いのをおして頑張った仕事の報酬も入金処理されそうにないので,途方にくれてます(泣

嘆いていても仕方がないのでブログを書ける間は書こうと思って頑張ってます。

さて,コンピュータ取引では,アルゴリズムが似たり寄ったりなので,同じ株に対する売りや買いが集中してしまうという問題があることが指摘されていますが,その背景には,違法にコピーされたソフトウェアが用いられているということがあるだろうと推測しています。推測というよりも確信に近いですね。

人間には手に負えない速度と分量のディールを瞬時にこなしてしまうので,もし市場が崩壊するとすれば,それも瞬時に崩壊してしまうでしょう。

それでも,売られ買われているものが本当は観念的な期待権に過ぎず,実質的価値はどれもゼロなのだということを誰もが正しく認識していれば,実質ゼロのものが名目ゼロになっても何も損はないことになりますから実体経済には影響を与えないはずです。しかし,単なる符号やトークンに過ぎないものが本当に価値を有すると信じている人があまりにも多過ぎるので,名目がゼロになるとリアルでも大混乱になってしまうという恐ろしさがあるんですよ。

いまさら証券取引を禁止しろと言ってもどうにもならないと思います。

一回,全面的に崩壊してみれば,私見が一番正しいということを誰でも理解することができるようになるでしょう。

ちなみに,期待権がゼロになっても地球上の物質の質量に微塵の変化もないはずですから,人類の生活には何も影響を与えることがないはずです。そのことを理解させるような経済学を構築しないと駄目ですね。現在の普通の経済学者には絶対無理な仕事ですけど・・・


投稿: 夏井高人 | 2011年3月19日 (土曜日) 16時47分

先生がご無事のようで安心しております。こちらも多少混乱はありますが、なんとか無事です。

GSのソフトウェア盗難事件ですが、先生のご指摘の通り、恐らく同様の事件は明るみになっていないだけで主要国の市場では起こっていると思われます。

近年の株式市場はHFT(高頻度取引)が主流で、欧米では既に注文の7割、後発の日本(東証)でも3割がHFTによる取引です。

HFTはミリ秒単位で売買を行い、超短期の鞘抜きを行うだけでマクロ経済や企業価値等は一切考えません。私は価格形成の歪みの危険がある上、システム暴走を危惧しています。

なお、これは私の個人的な見解です。

投稿: 石井佑基 | 2011年3月19日 (土曜日) 15時20分

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