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2011年2月24日 (木曜日)

米国:米国の行政規則に準拠したシートベルトを装備した自動車の事故について製造物責任を認める連邦最高裁判決

下記の記事が出ている。

 Supreme Court allows lawsuits over seat belts
 REUTERS: Feb 23, 2011
 http://www.reuters.com/article/2011/02/23/us-mazda-seatbelt-court-idUSTRE71M3Q020110223

事案を簡単に紹介すると,この事件はマツダのミニバンの後部座席に座っていて交通事故で死亡した者の家族から提起された訴訟事件で,事故当時,3人がけ後部座席の真ん中のシートについては腰だけのシートベルトしかなく,もし肩と腰でとめるシートベルトが装備されていれば事故による死亡は避けられたはずであり,肩と腰でとめるシートベルトを装備していなかったことが製造物責任に該当するとして損害賠償請求をしていたものだ。

当時の米国の行政規則(安全基準)では,後部座席(3人がけ)のうち,左右の座席については腰と肩でとめるシートベルトでなければならないが,真ん中の座席については腰だけでよいということになっており,マツダはこれに準拠していたのだから製造物責任はないと主張していた。なお,現時点では行政規則(安全基準)が改正され,真ん中の席を含め,全座席について,肩と腰でとめるシートベルトでなければならないことになっている。

原審であるカリフォルニアの裁判所はマツダの主張を認め,マツダに製造物責任がないとの判断を示していたが,上告審である連邦最高裁は,原審の判断を覆し,行政規則は注意義務の最低限度を定めるのに過ぎず,行政規則を完全に守っている場合でも製造物責任が発生することがあるとの判断を示した。

一般に,日本の企業では,「行政上の規則や基準され守っていれば,民事・刑事の法的責任を負うことはない」と考える経営者がかなり多い。

そのような考え方が「根本から間違っている」ということは,このブログでずっと主張し続けてきたことだし,法律家の世界ではむしろ常識に属することだ。しかし,どうしてそのことを理解してもらえないのか,本当に理解に苦しむことが多い。おそらく,法律家よりも政府のほうが偉いと思っているのだろう。その点で,そもそも間違っている。「国のガイドラインや規則や基準に従っていれば,それだで大丈夫」と考える経営者は,ただそのことだけで経営者としては既に失格だと言って過言ではない。なぜなら,そのような考えを持っているということは,その者が無知であり,かつ,「リスク管理能力」を完全に欠いているということを如実に示しているからだ。

国が定める基準等は最低限のもの(ミニマムスタンダード)であるのが普通で,現実には,それ以上の注意義務を尽くさなければ,民事・刑事の責任を免れることができない場合が多々あるし,そのことを示す実例や判例は数え切れないほど多数ある。

さて,後部座席の中央席が腰だけでとめるタイプのシートベルトになっている自動車は,日本では,むしろ普通だろう。

日本でも,製造物責任があり得ることを承認し,全ての車両について,すべての座席のシートベルトを肩と腰でとめるタイプに交換するためのリコールを直ちに出すべきだろうと思う。

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(余談)

私が少し変わっているのかどうか知らないが,世間には不思議に感ずることが多々ある。

例えば,自動車ではシートベルトの着用が厳しく言われているのに,二輪車ではそれがない。構造上の問題かもしれないが,何か方策を考えるのが理系(特に工学)の人間のやるべき仕事ではないだろうか?

また,自動車よりも高速で走行する新幹線には(ごく一部の車両を除き)シートベルトが全くない。私にとってはいつも不安に感ずることの一つだ。新幹線は「安全だ」と信じたいけれども,例えば,緊急停止信号が発令された場合に,予めコンピュータプログラムによって上手に制御されるように計画されていたとおりに原則せず,文字通り急停車することが絶対にないとは言えない。人間がつくる道具なので,どこか問題が潜在している可能性は常にある。そして,もし本当に急停車してしまった場合,車内は地獄だ。

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