地震による被災
ニュージーランドで被災した方々は本当に不運というかお気の毒だと思う。一人でも多く1分でも早く救助してもらいたいと思っている。
ただ,神戸の震災のときに感じたことを今回も感じてしまったので,ちょっとだけ書いておく。
それは,「人災」の場合を想定した証拠確保ということだ。
神戸の震災のときは,何だかわけもわからない間に瓦礫が片付けられてしまった。しかし,手抜き工事等により崩壊したビルが多数あったに違いない。その場合,天災ではなく人災なのだ。しかし,何となくうやむやにされてしまっている。
今回の地震災害で日本人が多数生き埋めになってしまったビルの崩落現場の映像を見ると,ちゃんとした鉄骨や鉄筋などが見えないことに気づく。基本的にコンクリートだけでつくられていた建物なのではないだろうか?
地震がないとされている国ではコンクリートだけの建物はむしろ普通だ。かつてタイのバンコクに出張した際,鉄筋抜きのコンクリートだけで建設中の建物をたくさん眼にした。現地の教授から聞いた話によれば,地震がないからこれで大丈夫だという。しかし,タイでは本当に地震がないのだろうか?
ニュージーランドの場合はどうかというと,日本と同様に地震国として世界的に有名なところだ。かつて,ひとつの街が全部崩壊してしまうほどの大地震災害に見舞われたこともある。
したがって,ニュージーランドにおいては,耐震性能の高い建築物でなければいけないのだろうと思う。建築基準法のような法律があるのかどうかは知らないので,行政法規違反かどうかは判断できない。しかし,行政法規の有無と民事上の損害賠償責任(安全配慮義務違反等)の有無とは無関係のことだ。
今回日本人の多くが被災した建物については,現時点で「人災」の可能性を想定し,可能な限り多くの証拠を確保しておく必要がある。
[追記:2011年2月25日]
大震災があると,必ず,**学者が登場し,「今回の被害は***が原因で・・・」と解説を始める。
それはそれで大事なことかもしれない。もしそのとおりであるとすれば,今後の震災対策に大いに寄与することだろう。
しかし,法律家としては,常に別の視点を持ち続けなければならない。
それは,「差分」だ。
今回崩落して大勢の犠牲者を出したビルと同じ構造のビルは必ず存在する。被害が同じであるかどうかを確認し,早期に証拠確保すべきだろう。
また,今回崩落したビルの近隣には,ほとんど被害を受けていない建物がたくさん存在する。どこが違うのかを可能な限り早期に検証し,証拠確保をすべきだろう。
この記事(本文)を書いて依頼,ずっとニュース映像から何が読み取れるかを考えていたのだが,2点だけ指摘できると思う。
それは,瓦礫の中に鉄筋や鉄骨等が極めて少ないということ,そして,コンクリートが非常に軟弱ですぐに崩壊してしまうものであること(骨材も乏しく,おそらく大部分が水だけのコンクリートだった可能性がある),以上の2点だ。簡単に言うと,ビルそれ自体が巨大な欠陥構造物だった可能性がある。
もしそうであるとするならば,今回の被災は,人災なのであり,天災ではない。
この重要な事柄から目をそらされてはならない。
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