仮想集中処理システムの提案
現在のクラウドの考え方は,集中処理する実サーバ上に多数の仮想サーバを構築し提供するというモデルに基づくものだ。
このモデルでは,共通のリソースを物理的に共有し集中的に管理できるという利点がある一方,実サーバにトラブルがあると仮想サーバ全部がすべて全滅してしまうという危険性がある。これは非常に大きな脆弱性要素のひとつだと言える。
そこで,仮想集中システムを提案する。
仮想集中システムでは,集中管理システムが仮想化されており,利用者が用いる個々のサーバの側が実サーバになっている。
例えば,5路線ある鉄道の運行管理システムを考えてみると,5つの路線それぞれについて個別に独立した管理用物理マシンが存在し,それらの管理マシン相互の間の情報のやりとりを媒介し,一括した処理を実行したりするための集中管理マシンのほうが仮想化されているというやり方だ。
実際には,完全な仮想集中マシンの実装には困難が伴うし,統制の優劣の処理などで難があるため,ハイブリッドなものとせざるを得なくなるだろう。それでも,利用者サーバのほうがもともと実サーバであって仮想サーバでなければ,集中管理システムが崩壊しても業務の遂行に支障が生ずることがない。
以前,このブログでパーソナルクラウドを提案した。仮想集中システムは,その大規模な応用例であると言えるだろう。
要するに,現在のビジネスの主流は,「何を仮想化すべきか?」という点で根本的に間違っているということに尽きる。
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統制側が仮想化されているというモデルは少しも目新しいモデルではない。
例えば,どの国でも,国家元首や国会議員等が全員不在になったとしても,官僚システムさえ残っていれば暫定的な統治を維持することが可能だし,政府システムを再構築することも容易だ。つまり,民主制であれ非民主制であれ,国家元首等は,実は仮想統治者であらざるを得ないという当たり前の現象がある。
企業においても,社長が死亡したり交代したとて企業の業務遂行それ自体には何らの影響を与えない。企業内の統治システムがちゃんと機能している限り,社長不在でも企業は存続することができる。
このような現実に存在している統治モデル(統治者は仮想的存在というモデル)に即してコンピュータ環境を構築するとすれば,実は,統制側が仮想化されることのほうがより合理的であるということができるのだ。
次世代のマネジメントモデルは,このような仮想統治者モデルを機軸とするものとなることだろう。
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