WikiLeaksがAmazonから締め出された事件に学ぶクラウドコンピューティングの問題点
この関連では,クラウドの問題点が明らかになったという観点からの記事が既にたくさん出ているので,特に紹介する必要もないと思うが,一つだけ紹介しておく。
WikiLeaks dubs Amazon 'The Cowardly Liar'
Register: 3rd December 2010
http://www.theregister.co.uk/2010/12/03/wikileaks_on_amazon_ousting/
さて,この事件から学ぶべきことは多数あるのだが,その中で最も重要なことは,Amazonのようなパブリッククラウド上の仮想サーバが一瞬にして消滅してしまう原因のひとつとして,「国家権力」というものがあり得るということだ。
もし,国防上危険だと判断されれば,問題視された仮想サーバは消滅させられてしまう。
その仮想サーバに対する統制(支配権)は,当該パブリッククラウドの運営者にのみあり,利用者は隷属的な地位でサービスを利用しているだけなので,何も発言権はないし,抵抗しようもない。
しかも,例えば,日本の企業が米国のパブリッククラウドのサービスを利用している場合を想定してみればすぐに理解できるように,当該日本の企業が米国政府に抵抗できるわけがないし,民事訴訟だって簡単にできるわけがないので,泣くしかない。
まして,例えば,日本政府のシステムの全部または一部が,米国企業のパブリッククラウドに置き換えられた場合,日本政府が米国に隷属することになるから,国としての主権と独立性を放棄するのに等しいことになる。このことは,物理サーバが中国にある場合でもロシアにある場合でも全く同じだ。
それでも,物理サーバが全部日本国内にあり,日本に所在する法人がそれを管理している場合には,まだやりようがあるかもしれない。けれども,物理サーバが他国にあり,日本国にある法人には何の決定権もない場合には,手も足も出なくなってしまう。
つまり,日本だけではなく世界中のどの国であっても,政府システムは,他国の企業が他国領土内から提供するサービスであってはならない。
そのことを正しく理解しないで,安易にコスト削減だけ考えていると,日本は独立国ではなくなってしまうのだ。
もし意図的にそのようにしようとしている者が政府内に存在するとすれば,それがどの国であるとしても,もちろん「売国奴」そのものだと断定してよい。
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