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2010年12月27日 (月曜日)

米国:2011年はクラウドコンピューティングの年か?

下記の記事が出ている。

 2011 – the year of cloud computing?
 Federal News Radio: December 26, 2010
 http://www.federalnewsradio.com/index.php?nid=249&sid=2213329

この記事でも触れられているが,セキュリティ上の問題点が解決したとは言いがたい。巷では「コモンクライテリア認証」をひきあいに出して安全性を説明することが比較的多い。しかし,「コモンクライテリア認証が全く役にたたないものだ」ということを,本当は,専門家はよく知っている。けれども,自分の食い扶持がなくなってしまうことを恐れ,専門家の中のほぼ全員が虚偽の言動をするか,または,沈黙を決め込んでいる。

真の意味で最も大事な判定ポイントは,「パブリッククラウドのベンダが完全に悪の場合でも,そのベンダが提供するサービスの利用者を守ることができるか」ということだ。

そして,悪と断定して差し支えないベンダは実在する。

例えば,それを悪と呼ぶべきかどうかは別として,北朝鮮政府が民間向けパブリッククラウドビジネスを提供し始めたと仮定しよう。そして,このパブリッククラウドサービスはコモンクライテリアとして必要な全ての第三者認証を得ていると仮定しよう。この場合,日本の企業は,そのパブリッククラウドサービスを信用し,安全なものとして評価することができるだろうか?

しかし,実は,(露骨に北朝鮮政府が運営しているものとは表示されていないが)実質的にみてそのような例と同視できるものが存在しないわけではないのだ。

トップマネジメントが悪である場合,いかなる第三者認証も全く意味をなさないのだが,形式的には第三者認証の「かたち」が存在しており,たいていの利用者は(実質的はなく)形式だけでものごとを判断する。つまり,この場合,第三者認証は,悪に寄与するために機能していることになる。

では,名実ともに政府のクラウドであれば信頼できると言えるだろうか?

米国政府に批判的な立場の者にとっては,米国連邦政府のシステムは悪のためのシステムであることになるだろう。中国であれ,ロシアであれ,北朝鮮であれ,そのことに関しては全く同等だ。つまり,「政府のシステムだから信頼できる」という定式は最初から成立する余地が全くない。あくまでも立場によって異なる相対的な評価が成立し得るのみだ。

さて,私の近未来予測なのだが,2011年中にセキュリティ破綻の実例が幾つか出てくるだろうと思っている。日本を含め,セキュリティの甘いシステムは,たちまち破られることになる。

このことは,日本の警察のテロ情報漏えい事件の顛末を考えれば,あまりも自明のことに属する。

政府システムの運用担当者全員が高潔かつ超優秀である国など,世界中探してもどこにも存在するわけがない。

そのことは,米国でも中国でもロシアでも全く変わりのないことだと思っている。そして,同様のことは,民間のパブリッククラウドでも当然に妥当する。

要するに,完全に信頼できるところなど最初から一つもあるわけがないのだ。

どうしてもパブリッククラウドを利用したいというのであれば,およそ想定可能な最悪の事態の中でも最もひどいことが発生した場合であっても自社には全く損失が発生しないような利用を考えるのが正しい経営者というものだろうと思う。

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コメント

Chiemi Satoさん

コメントありがとうございます。

セールスフォースのサービスが広く利用されていることは存じております。ただし,セールスフォースのビジネスの当否について具体的にコメントする気はありません。

なお,過去半年くらいかけて近未来のコンピューティング環境について徹底的に調査検討してみました。

結論として,パブリッククラウドサービスの寿命は総じて極めて短いと判断しました。アダ花のような存在かもしれません。

投稿: 夏井高人 | 2011年1月16日 (日曜日) 16時59分

興味深い内容です。
セールスフォースのクラウド http://www.salesforce.com/jp/ は多くの企業が使用しているようです。

投稿: Chiemi Sato | 2011年1月16日 (日曜日) 07時32分

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