珍しく「日本のRFIDタグに関するプライバシーガイドライン」を紹介する記事を見つけた
日本では,消費者向けの物品に付されるRFIDタグに関するプライバシーガイドラインがある。これは,私も関与して策定された米国のEPCのためのプライバシーポリシーに対応すべく,総務省と経済産業省の共同所管として策定されたガイドラインだ。普通の個人情報保護法の教科書では個人情報保護法の施行のためのガイドラインの一つとしてカウントされていないことが多いが(←不勉強のため,最初からその事実を知らない筆者が多いかもしれない。),立派に個人情報保護法関連のガイドラインの一種ということができる。
ところが,日本では,このガイドラインの存在は無視または忘却されてしまったのではないかと思われる状況にあることも事実だ。そのため,このガイドラインについて触れた論文等が非常に少ないというのが実情だ。おそらく,私が情報ネットワークローレビュー第3巻に収録するものとして執筆した「トレーサビリティシステムと個人情報保護法上の問題点」くらいが主要な論文で,あとは亜流に近い。私が書いた論文以外の論文は,なぜなら個人情報保護法がかかえる致命的な欠陥を意識しないで書かれているからだ。
これに対し,世界では,この総務省・経済産業省のRFIDタグに関するプライバシーガイドラインは意外と有名で,私が英訳したものをもとにしていると思われる英訳文がOECDのホームページ上に掲載されているし,それを引用する文献も結構たくさんある。
とはいえ,最近では,「あまり参照されることもなくなってきたな・・・」と思っていたら,意外なところで参照されている記事を見つけた。
November management briefing: Part II - RFID privacy concerns grow
Just-Style: 23 November 2010
http://www.just-style.com/management-briefing/part-ii-rfid-privacy-concerns-grow_id109620.aspx
この記事では,産業界によって日本のガイドラインが遵守されていると書いてある。その理由は,「経済産業省に叱られるのが怖いから」とのこと。本当だろうか?(笑
冗談はさておき,この記事は,EUにおけるRFIDタグの普及の努力とそれに伴うプライバシー上の問題について書かれたもので,専門論文ではないけれども何が問題になっているのかを認識するためには参考になる記事ではないかと思う。
ちなみに,RFIDタグのプライバシー問題の本質的な部分がどこにあるのかについて,夏井高人監修『ITビジネス法入門』(Tac出版)の300頁以下でも触れられている。
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