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2010年10月 4日 (月曜日)

瀬戸口明久『害虫の誕生-虫からみた日本史』

昨日はちょっと用事があって東京まで出た。渋谷方面なので片道1時間半ほどかかる。移動中の電車内で下記の本を読んだ。

 瀬戸口明久
 『害虫の誕生-虫からみた日本史』
 ちくま新書(2009/07/10)
 ISBN-13: 978-4480064943

これは良い本だと思う。

目下,明治大学で「植物と法」というテーマの講義をしている。先週は,「自然を管理可能な対象として考えるのがキリスト教的・西欧的な考え方であり日本人が古来もっている自然と交わるという思想とは根本から異なることを理解した上で自然保護に関する法や政策を考察しなければならない」という趣旨の講義をしたのだが,学生はきょとんとしていたような気がする。宗教観や自然観の相違が法思想や法の解釈・運用にも重大な相違を生じさせるということを教えることは簡単なことではない。特に日本人は,一般に,「諸外国の人々も日本人と同じように感ずるはずだ」と思い込みやすい。本当は,そうではなく,全く違っているということを前提に,「いかに説得するか」を考えなければならないのだが・・・

というわけで効果的に授業を進めるための教材として何かよい本がないかと思って探していたのだが,この本はうってつけじゃないかと思った。

賢い学生であれば3~4時間くらいで読了し完全に理解することができるだろう。

なお,情報セキュリティ関連で仕事をしている方にもお勧めしたい一冊だ。

しばしばコンピュータウイルスやワームについて,自然界のウイルスや虫などとの対比で話をすることがあるが,本当に昆虫や微生物について知った上で話をしているのかどうか疑問に思うことが決して少なくない。それを話題にする以上は,ごく初歩的なことでかまわないから,関連する分野を扱う良い入門書を読んでおく必要がある。この本は,その意味でもとても良い本ではないかと思う。

久々に良い本と出遭った。

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コメント

丸山満彦さん

これは良い本だと思いました。

直接的には昆虫学の歴史と日本社会における意味のようなものを分かりやすく解説する本です。

しかし,そこに書かれている洞察や示唆にはかなり深いものがあります。

企業の内部統制を含め,「統制」というものを考える場合にも,欧州や米国の専門家がイメージし理解している「統制」と日本の多くの人々が理解している「統制」とが相当食い違っていることがありますが,その社会的・歴史的原因の一端を知ることもできます。

このように,抽象化された一般モデルとしての汎用性の高い書籍は,良い本としての一つの特性を有していると理解しています。

ちなみに,この「統制」という点については,完全な抽象モデルという形式で,夏井高人監修『ITビジネス法入門』(Tac出版)の486~489に書きました。おそらく,この分野に関して現時点で世界に存在している全ての書籍の中で最も正しいことが書いてあると自負しています。容易に理解可能な理論なので,今年中に世界レベルで通説になっているだろうと思っています。

投稿: 夏井高人 | 2010年10月 6日 (水曜日) 09時09分

夏井先生、おもしろそうな本の紹介ありがとうございます。。。

投稿: 丸山満彦 | 2010年10月 6日 (水曜日) 00時12分

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