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2010年9月18日 (土曜日)

JR東でSuica情報を不正処理して旅客運賃課金を免れていた従業員に対し懲戒解雇を含む厳しい処分

下記の記事が出ている。

 ICカード情報を不正操作した従業員を懲戒処分 - JR東
 Security NEXT: 2010/09/17
 http://www.security-next.com/015064

こういうことがあるということはかねてから噂されていた。

へたにこのブログに書くと,逆に名誉毀損等で訴訟を提起されてしまいそうだったので,知ってはいたけれども書かなかった。そういうネタは数限りなくある。別に守秘義務があるわけではない情報でも迂闊に書くわけにはいかない。

この事案が刑法のどの罪に該当するかについては,Suicaの課金システムをどのように考えるかによって分かれてくる。全体として電子計算機であると理解するとすれば,電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性がある。しかし,電子計算機であると理解しないとすれば,通常の詐欺罪ということになるだろう。この点についての現在の刑法学上の通説がほとんどガタガタで使い物にならなくなっていることは,『ITビジネス法入門』の第3章で暗に示唆したとおりだ。電磁的記録の単純な消去行為については,私電磁的記録不正作出罪にも私電磁的記録毀棄罪にも該当しない可能性はある(カード内の電磁的記録を一体のものとして理解するか,個々の区間課金情報毎に電磁的記録の個数を考えるかによっても解釈が異なってくる。この点も現行刑法は不十分なので抜本改正が必要だ。刑法学者や裁判官の多くは法解釈論(拡張解釈)で乗り切ろうとするかもしれないが,罪刑法定主義の原則からすると,あまり感心できない。刑法一部改正が最も妥当と思われる。)。

ちなみに,類似の手口(無権限なポイント情報書き込み)によるマイレージポイントやショッピングポイントの取得という事例もないわけではない。

マイレージポイント等を商品やサービスと交換した場合,課金情報を消去して課金がないようにして財産上不正の利益を得る場合と同様,当該商品やサービスの価額に相当する詐欺行為が成立していることになるだろう。

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