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2010年9月15日 (水曜日)

英国:違法コピーの通知と訴追のための費用は著作権団体に負担させるとの政府方針

下記の記事が出ている。

 Illegal downloads: music industry to carry cost of catching pirates
 Guardian: 14 September 2010
 http://www.guardian.co.uk/technology/2010/sep/14/illegal-downloads-music-industry

犯罪の捜査と刑事公判は,国家秩序及び社会秩序の維持のためになされるものなので,税金でその費用をまかなうものだ。

殺人などの自然犯では当然そうでなければならない。

しかし,違法コピーなどの著作権侵害の罪の場合,その発生数が非常に多いために税金だけではとてもまかないきれないという問題がある。また,知的財産権侵害は,自然犯であるとはいえない。

ただ,犯罪捜査や刑事公判の費用を著作権等の権利者が負担すべきだとする理論的根拠を整合的に説明するとなると,法制度上の相違を一応措くとしても,ちょっと難しい面がある。少なくとも日本ではなかなか通り難いやり方だろうと思う。

にもかかわらず,著作権侵害の罪の捜査のために警察や検察の予算を全部使ってしまうとなると,重大犯罪の捜査ができなくなってしまうことにもなるという現実がある。

著作権法違反行為の発生数の多さと,税金の支出の公平というものとの関係を同考えるかというこれまでの法学ではあまり考えられてこなかった問題がここに生じている。

この問題に関する限り,これまでの法学は,あまりに観念的に過ぎたと思う。また,国庫が無限であることを前提にしているような法理論は,極めて非現実的だとも思う。

私見によれば,基本は,国家の本質をどうとらえるかということにすべてかかっている。私は,古い「国庫説」が最も正しいと理解している。つまり,国家とは税金の分配システムだという考え方だ。

もともと「ない袖はふれない」ので,いまある税収の範囲内でのみ権利が国家権力によって保護されるのは当然のことと考えるべきだろう。

あまり観念的に考えないようにすること,そして,自分の権利だけを優先的に保護すべき合理的な理由などどこにもないという当たり前のことを理解することがこの問題を考える上でのポイントだと思う。

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