ブラジル:学術団体や音楽著作権団体等が共同で,政府に対し,ファイルシェアリングを合法化するように要請
下記の記事が出ている。
Major Coalition Pushes to Legalize File-Sharing in Brazilian Copyright Consultation
Zero Paid: September 3, 2010
http://www.zeropaid.com/news/90541/major-coalition-pushes-to-legalize-file-sharing-in-brazilian-copyright-consultation/
もちろん,無条件で合法化しろと言っているわけではない。
一定のライセンス条件の下で,ファイルシェアリングを合法化したほうが良いとの要請のようだ。
日本での議論でも参考になるのではないかと思われる。
ただし,この記事でも解説されているように,過去にも同じような例はあり,例えば,カナダや米国ではいずれもこの種の要請が認められなかった。著作権法の専門家とされている者の多くが著作権のことしか理解できていないか,または,特定の団体に既に買収されてしまっていることに起因するものと推定される。
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以下は,あくまでも一般論。
日本では,あまりも単純化され過ぎた議論が横行することがあり,ファイルシェアリングというだけで違法なものと考える者がある。
ファイルやアプリケーションのシェアが,ファイルシェアリングであるというだけで違法であるとすれば,すべてのASPやクラウドコンピューティングサービスも全て違法だということにならざるを得ないのだ。それは,間違っている。
おそらく,それらの課題を整合的に考えるだけの知的余裕やキャパシティがないのだろうと推定される。
もっと本質を見極め,どの場合であってもデフォルトをすべて違法行為ととらえることは正しいのだが,そうした上で,違法性阻却事由としてのライセンス契約という枠組みで整理してみると,非常に簡単にものごとを理解することができるし,非常に応用範囲も広い。
ファイルシェアリングの場合にも,ただそれだけで違法と判断するのではなく,違法性阻却事由の有無によって判定すべきだろう。例えば,権利者がすべて事前に同意しているファイルシェアリングも存在するが,そのような場合にもファイルシェアリングが違法であるわけがない。したがって,「ファイルシェアリングは違法」という表現は,正確ではない。ファイルシェアリングの中でコンテンツがどのような条件の下でシェアされているのかが重要なのだ。
「コンプライアンス」とは,そのような諸々の適法化要件(違法性阻却事由)を見つけ出し,実装し,運用し,監査し,改善するという営みにほかならない。
いわゆる技術的中立性をめぐる議論も,かくして法律論の枠組みの中で考えることが可能になる。
単純に適法行為を羅列するような「丸暗記式」の頭脳しかもっていない者には理解し難いことかもしれないが,本当は,上記のような思考整理が最も安定しているし合理性を有している。
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