浮き足立つ・・・とは?
このごろ「言葉尻」をとらえるようなことばかり書いていて恐縮なのだが,やはり気になるので書くことにする。
昨日のことだが,ある民放の番組の中で,浅草のスカイツリーのことについて報道していた。
スカイツリーはまだ完成していないけれども,その見物客などによって地元の商店街がにぎわっているということだった。実際そうなのかどうかは,現場に行って確認しているわけではないのでわからない。
ところで,この番組では,そのようにして賑わいをみせていることから,地元の商店が「浮き足立っている」と報道していた。
これは少しおかしいのではないだろうか?
「浮き足立つ」とは冷静な判断ができなくなり,狼狽して,逃げ腰になっている状態のことを意味する。
ここでは,「活気にあふれています」または「この賑わいに大きな期待を寄せています」といったような表現をするのが適当だったのではないかと思われる。
ところが,「浮き足立っている」とは・・・
これでは,その放送局が地元の商店街を誹謗中傷しているのと同じだ。
念のために説明しておくと,過失による誹謗中傷でも不法行為に基づく損害賠償請求が発生する。故意に誹謗中傷をした場合だけには限られない(民法709条)。
この場合の過失に関して,一般人が不勉強または思い込みのために語句の使い方を間違った程度では過失があるとはいえないだろうと考えられるが,放送局は言語を用い構成される番組を提供しそれによって利益を得ているプロだ。プロである以上,注意義務の程度が格段に異なっている。
同様の例は,日々何百回も耳にする。無自覚にそれに合わせていると,こちらの知性のレベルがどんどん低下してしまいかねない。
だから,次第にテレビを視聴しなくなる。
やはりテレビの時代は終わった。
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コメント
匿名さん
通常,知り合い以外の匿名コメントは,原則として,掲載拒否しておりますが,特に掲載することにします。
「熱くなっている」と感じられたかもしれませんが,私にとっては特に感情的になって書いた文章のつもりはありません。私の文章スタイルが特殊なのかもしれませんが,それは私の個性です。
さて,このTVのシーンで「浮き足立つ」を使うことは,地元の人々にとって誹謗中傷に近い行為だと判断しています。そして,間違い(過失)によっても損害賠償責任を免れません。つまり,この放送は,地元住民の皆さんに多大な迷惑をかけていることになります。そのことを淡々と述べているだけです。
一般論ですが,人間である以上,誰にでも間違いはあります。私にももちろん間違いやミスはあります。
しかし,放送は,放送法によって特別に周波数の独占が認められている特殊なビジネスであり,かつ,一方向の通信であるがゆえに,放送内容に対する反論や批判ができません。TV局は,そのような独占禁止法の例外的取扱いという極めて異例な特権に基づいてTV放送をし,そのTV放送によって収益をあげているのです。それゆえに,私のような一般人とは異なり,格別に高い注意義務を負っていると解するのが当然の法解釈だと理解しています。注意義務を負いたくなければ,TV局を廃業するだけで済むことですので,簡単なことです。
これまで何度かTV局に対して間違いをただすメールを送ったことがありますが,返事が返ってきたことは一度もありません。もしTV局が間違いを認め,番組の中で必ず陳謝するような慣行があったとすれば,私がブログにこのような記事を書くこともなかったと思っています。
これに対し,このブログは,私の私的なブログであり,読みたくない人はアクセスしなければ良いので,今後も思ったことを書こうと思っています。
これは,私の思想信条の自由及び表現の自由の範囲内のことですし,正当な批評ですので,誹謗中傷にも該当しません。
そして,単に感想を淡々と述べているだけですので,感情的になっているわけでもありません。
あくまでも一般論ですが,人間は,あまりにもあきれてしまう場合には,むしろ感情がないのと同じくらいまで冷めた気持ちになってしまうことのほうが普通なのではないでしょうか?
なお,「暗い記事」という点については,情報セキュリティや権利侵害等に関する記事では,その属性上やむを得ないところだと思います。
「明るい」という点については,このブログ内にある約3700の記事全部に目を通していただければ,私が,無償で,いかに社会のために積極的に貢献することをしているのかをご理解いただけると信じます。この記事だけではなく,まず
全ての記事を読了されることをお願いします。
投稿: 夏井高人 | 2011年3月 1日 (火曜日) 12時28分
意味を履き違えた言葉の使用。
納得がいかない方にとってはそうかも知れませんね。
ただ、プロといえども人の子であり、多少その道の知識や経験が一般人より長けているだけ。プライドや誇りに掛けると感じる方こそ増えているのかも知れませんが、間違いは誰にでもありますので、そこまで熱くなる必要はないように思います。
言葉というもの自体、何千年も前から今まで、コミュニケーションツールとして人間が勝手に決めてきたものですから、そもそも使い方が正しいとか間違いという考え方自体が誤りで、大切なのは「自分の気持ちを相手にどう伝えるか」だとワタシは思います。
「浮き足だった商店街」という発言で、いかにも街が活気付いている印象を視聴者に与えたのならそれで良し。逆に傷付いた人がいるのであれば謝罪するべき。ただそれだけのことのように思います。
ただ、発言者自身が誤った発言や誰かを傷付けたかも知れないことに気付いていないのであれば、それに気付いて、どこか納得できていないと感じている貴方のような方々が指摘してあげるべき。じゃなきゃ世の中は変わらない。
ご面倒かと思いますが、暗いと不平を言うよりも、進んで明かりを点けることをご検討頂けたら幸いです。
投稿: 匿名 | 2011年3月 1日 (火曜日) 08時27分