日本人の個人データ保護は大丈夫か?
政治的なことは書かないようにしているが,現下の対中国問題が非常に厳しくなってしまっているので,あえて書く。
中国の主張の当否については様々な見解があり得ると思うが,中国では,「倭国は中国に朝貢していたのだから,日本全域が最初から中国の領土の一部だ」または「日本は秦の始皇帝から命を受けた徐福が建国した国家であるから,もともと中国の一部だ」との見解があり,中国の正式の歴史教科書ではそのように教えてきたし,今でもそのように教えているので,中国人民の大多数はそのように理解している。倭国が朝貢していたかどうかは知らないが,仮に魏志倭人伝に書かれている内容が真実であったとしても,その「魏」は相当昔に滅んでしまっているので不思議な主張だと思う。秦についてもまた同じ。
また,中国の一部には,「沖縄は中国の領土であり,沖縄の住民の大半は独立することを望んでいる」との見解もある。独立国であることと中国の領土であることとは自己矛盾するのではないかと思うが(おそらく,独立国であっても中国に朝貢している属国であるので,中国の領土の一部であるという主張になるのだろう。事実,琉球王朝は清と薩摩藩の両方に朝貢していたので,中国の主張のように属国は領土の一部であるという考え方が正しいと仮定すると,琉球は二重に属国の状態にあったと考えることもできる。沖縄の住民は怒るべきだ。),この見解は,問題となっている尖閣諸島を含め南西諸島及び周辺海域全域が中国の領土の一部であるという中国政府の姿勢を示すものといえるだろう。仮にこの主張が正しいとすれば,日本が沖縄を領土としていることは,侵略行為であることになり,それを支援するために軍隊を置いている米国もまた侵略国であることになるだろう。
ところで,これまの正式見解としては,現在の中華人民共和国政府は,清の乾隆帝の時代の最大版図をもって中華人民共和国の領土であると主張してきた。だから,インドとの間でカシミール問題も発生した。しかし,この主張を前提とする限り,沖縄が中国領であるとの主張が出てくる根拠はないことになる。したがって,現在の中国政府は,従前の主張を更に大幅に拡張した領土概念を持っていることになるだろう。
たぶん,それは,元の時代の領土のことを意識しているのではないかと推測される(同じベースで考えてみると,イタリアは古代ローマ帝国の最大版図であった欧州全域,イングランド,北アフリカ,中近東を領土として主張してよいことになるはずだ。しかし,誰もそのようには考えない。過去に存在した国は既に滅びてしまい国家主権それ自体が失われてしまったので,その領土は現在ある国の領土とは関係がない。国が滅びるとは,そういうことを意味する。)。
仮にそうだとすれば,上記の魏志倭人伝や徐福伝説を根拠とする説はさておくとしても,元軍が日本の対馬を完全に占領したことは歴史的事実であるので,対馬も中国領であることになるという主張をもっている可能性がある(もちろん,朝鮮半島全域も中国領であることになる。もともと朝鮮の王朝は中国に朝貢し属国の一種である保護国となっていたので,中国にしてみれば,現時点でも朝鮮半島は中国領であると信じている可能性はある。)。のみならず,チンギスハンとその子供達による世界侵略はすさまじいものであり(一説によれば,世界中の男性の遺伝子中では,200人に1人の確率でチンギスハン及びその一族の遺伝子が検出されるという。),ロシア,インドの北半分,アラビア半島全域~トルコ,欧州の東半分が中国領であるという趣向を論拠付けることにもなる可能性がある。
要するに,現在発生している問題は,尖閣列島及びその周辺の海底油田(天然ガス田)の帰属だけが問題なのではない。
実は,この問題は世界規模での重大問題なのだ。
私は政治学者ではないので,上記の認識は間違っている可能性があるが,一応その前提で,以下,個人情報保護上の問題について心配なことが多々あるので述べておく。
今後,中国との間の関係が更に悪化した場合,中国に所在する日本企業全部が強制的に中国政府によって接収されるといった事態が発生し得る。
周知のとおり,中国に生産基盤を置いている日本のIT企業だけではなく,データセンターを置いているIT企業やデータ処理の業務委託をしている企業も多数ある。これらの業務が一斉に中国政府によって強制的に接収された場合,それらの日本企業が直ちに倒産してしまいうことは当然のこととして,その影響により直ちに世界大恐慌が発生することになるだろう。もちろん,その影響は中国企業も免れることができないから,中国もまた大混乱の状態となるが,その前に日本企業の大半が壊滅的な打撃を受けることになる。
そのようになった場合,既に中国内に移転されてしまっている日本人の個人データは,誰によっても全く保護されないばかりか,中国政府や中国企業によってすき放題に利用される危険性が極めて大きい。
具体的にどの日本企業がそうかということを指摘することには躊躇を覚えるので指摘しないが,該当する企業は,1~2日中に日本人の個人データを全部引き上げるか,または,完全なバックアップを日本国内に確保した上で,中国内にあるデータをいつでも使用不能状態にできるような措置を講ずるべきだろう。
なお,そのような措置を講ずる場合,中国の法律上,中国のインターネットは中国の公安が管理することになっており,中国の公安が常にすべての通信を検閲していると認識したほうが妥当なので,リモートによる措置の実施が中国の公安によって阻止される可能性を考えておく必要がある。
中国側にしてみれば,歴史的・政治的に当然のことを主張しているだけであり,日本のような小さな属国が中国という宗主国(中華)に反抗することなど断じて許されないと理解しているのかもしれない。しかし,日本企業の側では,そのように認識・理解してはいないだろうと推測されるので,あえてこの記事を書くことにする。
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