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2010年9月26日 (日曜日)

フランス:ある男性について「強姦」等のキーワードと自動的に関連付けをしたことが名誉毀損に該当するとして,Googleに対し,5,000ユーロの損害賠償金の支払いを命ずる判決

下記の記事が出ている。

 French court orders Google Inc to pay libel damages: report
 REUTERS: Sep 25, 2010
 http://www.reuters.com/article/idUSTRE68O14020100925

この判決の法理を理解するポイントは,「自動的な評価」がシステムによってなされているという点だ。

日本国の刑法の名誉毀損罪に関しては,「公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には,事実の真否を判断し,真実であることの証明があったときは、これを罰しない」との違法性阻却事由が法定されている(刑法230条の2)。民事上でも同様であると解するのが通説・判例だ(これらの点については,夏井高人監修『ITビジネス法入門』(Tac出版)の第3章及び第4章の該当箇所を参照されたい。)。

そして,これらの違法性阻却事由は,主観的な構成要件要素(法律要件要素)を含んでいいる。つまり,表現行為を行った者の主観的認識や意図において,これらの違法性阻却事由に該当する要素が含まれていなければならない。

人間の思考・思索に基づく学術研究,評論,報道等の場合,一般的には,このような要件充足性が認められる限り,描写された個人の名誉の保護よりも表現の自由や経済的自由の保護のほうが優先するものとして法的に取り扱われることになる。

ところが,自動的な処理によって結果を生じさせてしまう検索エンジン,センシングWeb,プロファイリング,ライフログ等では,名誉毀損の結果が発生してしまった場合において,上記の違法性阻却事由となるような主観的事由が個別的に生ずることがあり得ない。つまり,常に違法性阻却事由が成立しないシステムであることになる。

この法原理は,極めて単純・明快なものだ。

他人の属性について自動的な評価付けを実行するシステムを構築・運用する者は,もしその自動的な評価付けの結果を不特定多数の者に公表するのであれば,名誉毀損の結果を自動的かつ大量に発生させやすいということを正しく認識・理解すべきだろう。また,そのような評価付けの結果を不特定多数の者に公表することを前提にしていないシステムである場合であっても,その評価結果を示す個人データがセンシティブな情報である場合またはこれに順ずる情報に該当することが大いにあり得ることを正しく理解する必要がある。

[追記:2010年9月27日]

日本語版の記事が出ていたので追加する。

 検索サジェストで「レイプ犯」は名誉毀損、グーグル敗訴 フランス
 AFP: 2010年09月27日
 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/it/2761200/6251007

Googleの代表者に対して上記の法理論を理解しろと求めるのは無理かもしれない。そもそも大陸法と英米法の相違さえ全く理解していないのではないかと思われる。しかし,それは,法律家ではないから仕方がない面もあるかもしれない。顧問弁護士が適切でないのかもしれない。

なお,英米法ベースで考えた場合でも,プロッサーの分類における第3分類のプライバシー侵害に該当することになるだろう。

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