仲間はずれニッポン
個人情報保護法に関して,下記のブログ記事が出ている。
仲間はずれニッポン (プライバシー保護)
まるちゃんの情報セキュリティ気まぐれ日記:2010年8月25日
http://maruyama-mitsuhiko.cocolog-nifty.com/security/2010/08/post-01dd.html
仲間はずれニッポン
これからのネット取引を考えるECネットワーク:2010年08月24日(火)
http://blog.canpan.info/ecnetwork/
ここに書かれているとおりで,日本の個人情報保護法は,駄目法律だ。駄目法律になったことには多々理由がある。
下の記事の中ではこれまでの財界の姿勢にも問題があったのではないかとの指摘がある。
確かにそうかもしれない。しかし,それ以上に,当時の国務大臣達が賛成ではなかったということがある。公正取引委員会のような独立委員会として個人情報保護委員会を設立することにし,その長をもってプライバシーコミッショナーとすれば足りたはずなのだが,それでは各省庁で個人情報保護がらみの事業予算をとることができなくなってしまうので,大反対ということだったと聞いている(自民党政権当時)。
また,マスコミや労働団体なども強く反対していたので,財界だけの責任ということはできない。
更に,学者もぜんぜんわかっていなかった。
当時,プライバシーコミッショナー制度を入れるべきだと主張してきたのは,私を含め本当にごく少数の学者だけだったし,その後個人情報保護法が制定されてからも即時全面改正とコミッショナー制度の導入を主張してきたのは私だけじゃないかと思う。
上記の記事では,このような日本の孤立状態が経済運営にも甚大な悪影響を及ぼし始めている現状が正しく認識され始めたことを示唆している。
このほかにも,日本だけの孤立した制度がいくらでもある。
私は,ガラパゴス化に親和的な人間なので,合理的な理由があれば日本独自でいくことはむしろ好ましいことだと思っている。しかし,合理性がない場合や弊害が多過ぎる場合は別で,一応基本線だけは国際的に通用するものとしなければならないと考えている。
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コメント
senryoさん コメントありがとうございます。
やっとこの問題が広く知られるようになってきましたね。
個人情報保護法制定当時から堀部先生がそのことを指摘し続けてきたのですが,日本の行政組織の中では到底受け入れがたいものであったため無視されてきました。
なぜなら,どの官庁の所管業務にもまたがる独立の官庁ができてしまうと,各省庁の事業予算の一部がごっそりととられてしまうことになるからです。プライバシーコミッショナー制度の導入を妨げている原因は,これに尽きると思われます。
同じことは米国でも言えるのですが,特別の分野に限って個別にプライバシーコミッショナー制度を導入することによって全官庁を敵にまわすということを避けつつ,他方ではEUに対してはゴリ押しでセーフハーバー方式を認めさせてしまうというやり方で乗り越えました。いわば力ワザです。
というわけで,この問題は,法解釈の問題ではなく,完全に政治の問題だといってよいと思います。この点について何もできない政府は,要するに,B級未満の政府だということになるのでしょう。
投稿: 夏井高人 | 2010年9月24日 (金曜日) 05時28分
日本は着々と仲間はずれの道を歩んでいるように思えます。本日、下記の記事を見つけました。
[New Zealand Privacy Commissioner]
US Federal Trade Commission joins Asia Pacific Privacy Authorities Forum
http://www.privacy.org.nz/us-federal-trade-commission-joins-asia-pacific-privacy-authorities-forum/
[Global Privacy Enforcement Network]
Global Privacy Enforcement Network Launches Website
https://www.privacyenforcement.net/
太平洋地域でも、OECDでも。APPAにFTCがメンバとして入ったということは、今後、日本が加入してもお客さん扱いでしょう。
Global Privacy Enforcement Networkのメンバ機関は以下の通りです。
・Australia: Office of the Privacy Commissioner, Office of the Victorian Privacy Commissioner
・Canada: Office of the Privacy Commissioner of Canada
・France: Commission Nationale de l’Informatique et des Libertes
・Germany: Federal Data Protection Commission
・Ireland: Office of the Data Protection Commissioner
・Israel: The Israeli Law, Information and Technology Authority
・Italy: Garante Per La Protezione Dei Dati Personali
・Netherlands: Dutch Data Protection Authority
・New Zealand: Office of the Privacy Commissioner
・Spain: Agencia Espanola de Proteccion de Datos
・United Kingdom: Information Commissioner’s Office
・United States: Federal Trade Commission
投稿: senryo | 2010年9月23日 (木曜日) 19時52分
丸山 様
夏井です。
プライバシーコミッショナー制度だけでなく非常に多くの事柄について日本が国際的に白眼視されている部分があります。政府はもちろん真実を公表するわけがないし,国会議員の大半は事実を認識していないし,マスコミもぜんぜんわかっていないので,現状が好転する可能性は皆無だと思っています。要するに,井の中の蛙ですね。
マスコミが改善されるためには,「自分がこれまで学んできたこと全てが虚偽かもしれない」という前提で,徹底してリアリストになってものごとを見つめるというマスコミ本来の姿勢を取り戻さないと駄目ですね。コンテンツのアウトソースが主流になってしまって以来,マスコミはそのような眼を失ってしまいました。取材して安直に記事をつくるのではなく,徹底的に自分の手と足と眼と頭をつかって洞察を深めないと駄目です。
個人情報保護法制定のプロセスの中で,堀部先生は,とてもお気の毒だったと思っています。大変な苦労を重ね,やっととりまとめをしたのに,ひどくずるくて権力欲しかないような人に横取りされ,しかも改悪されてしまいました。
横取りした人はその後大いに出世しました。ご満悦だっと聞いています。しかし,歴史に名を残すような劣悪な仕事が多かったです。将来に大きな禍根を残しましたが,ご本人にはその自覚が全くないと聞いています。
ご存知のとおり,その人は司法制度,司法試験制度及び法曹養成制度を改悪した人々の中の一人です。これらの人々は,いずれも何らの責任もとろうとしない。もちろん,自分の仕事の間違いを認めることもありません。人間としてどうなんだろうかと疑問をもつことが多いです。
最高裁は全く反対の意見をもっていましたが,司法権という立場上,積極的に国の制度を変えるというポジションで行動するわけにはいかず,改悪の結果をまねくものであっても国の方針を飲まざるを得ず,やる以上はベストに近いかたちで国の方針に協力をしてきたと理解しています。
こんなわけで,どの制度についても,おかしなことばかりです。
私の学説は,「夏井説」とあだ名されるくらい異端扱いされることが多いですけど,時間がたつといかに正しい説であるかを歴史が証明してくれています。「夏井説」とあだ名されているどの説についてもそうですので,いずれすべての部分について通説になっているだろうと確信しています。
これまで書籍という形では公表してこなかったので,近々に出版する本の中で3つの部分だけ夏井説の本質的部分を明確に示すことにしました。3つの部分とは,プライバシーの理論,サイバー財産罪の本質,統制の本質と関係するものです。いずれも完全に正しい説ですし,欧米では間違いなく直ちに通用する説なので,日本でもいずれ必ず通説になります。
このようなわけですので,今後も自分の信念を貫きます。
ただ,信念を貫くとひもじくなってしまうことも事実ですね。これは歴史上いくらでもあった事例と同じパターンなんですが・・・火あぶりの刑で殺されることはないと思いますけど,いずれ餓死してしまうかもしれません。(笑
投稿: 夏井高人 | 2010年8月27日 (金曜日) 08時06分
夏井先生、丸山です。
政府側が第三者委員会に積極的に賛成するわけがありませんね。。。
個人情報保護法の成立に尽力をした堀部先生が、譲歩したことについて少し反省の弁をされていました。
当時はまずは成立というところから始まったのかもしれませんが、ならばこれからはよい方向に持っていくという作業が必要となりますね。。。
投稿: 丸山満彦 | 2010年8月27日 (金曜日) 06時51分