Google(Gmail)が世界の電話局になる日
下記の記事が出ている。
Google to allow phone calls from Gmail
REUTERS: Aug 25, 2010
http://www.reuters.com/article/idUSTRE67O4NZ20100825
独占禁止法の問題はあると思われるが,専門外なので詳論しない。
通信法の関係では,もし日本のIP電話利用者がGmailに一斉移行したとすれば,電気通信事業法の適用可能なプロバイダの大半が消え去るのと同じことになるかもしれない。Googleに対して日本国の主権は及ばないからだ。
しかし,行政監督不可能な通信事業者がシェアの大半を握っている市場というものを想定した上で,それに対応するために必要な国家政策を考えることのできるだけの有能な人材は見当たらない。
見当たるのは,米国で新製品が出ると浮かれて喜んでいるだけの評論家のような似非文化人ばかりだ。はっきり言って,国賊だと思っている。
やはり,日本は終わってしまったのだろう。
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なお,Gmailは,Googleが提供するパブリッククラウドサービスの一部であると理解することが可能だ。したがって,もしGmailが大規模に世界的シェアを獲得してしまうと,次のような事態を想定することが可能となる。
1) Gmailサービスを提供する物理装置が何らかの原因で停止すると,世界中の電話が通話不可能になる。
2) Gmailのホストがコンピュータウイルス等によって汚染されると,すべての利用者がほぼ同時に一斉に汚染されることになる。
3) Gmailはアメリカ合衆国の国家主権に服するので,同国のホームランドセキュリティ法の適用がある。つまり,常時,諜報機関による傍受と監視の対象となり,通信の秘密が事実上存在しない。そのため,プライバシーも企業秘密も成立しない。
4) 日本国法が適用されないので,日本国法の適用を前提とした犯罪捜査をすることができないし,また,日本国法の適用を前提とする損害賠償請求をすることもできない。
5) 日本国の個人情報保護法が適用されないので,主務大臣による監督は原理的に不可能となる。そもそもGoogle本社は,個人情報保護法の適用対象としての個人情報取扱事業者として扱うことができない。
6) 日本国の法令に基づく監査や検査等が一切できない。
7) Google本社に対しては,日本国の電気通信事業法の適用がないので,同法及び関連政令に基づく物理装置等の安全検査等が全くできない。
8) 日本国固有のプロトコル等は一切否定される。
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