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2010年7月16日 (金曜日)

寓話:ある国のおはなし

以下は,全てフィクションである。実在の組織,人物,企業活動等とは一切関係がない。

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むかし,大英帝国が7つの海を支配していたころのおはなし。

あるとき,大英帝国は,少数の部族が分かれて住む多数の島からなる地域を南洋上に発見し,ごく少数の海兵隊だけで簡単に支配することに成功した。

大英帝国は,その地域を示す緯度と経度を国際的に公表し,以後,自国の植民地とすることを宣言した。

その植民地には,総督としてクラウド伯爵が赴任した。立派な紳士であり,容姿端麗,ものごし柔らか,サーベルの腕は天才級ということで,誰からも信頼を受けていた。

クラウド総督は,隣の植民地から移植したエリートを士官とし,現地人の兵隊を監督させて植民地軍を組織し,他国からの侵略に備えた。このエリート士官達は,英国の有名大学や士官学校に留学し,自己認識としては英国人の一人だというプライドをもっていた。

そして,平和に時が流れた。

クラウド総督は,非常に博識であり開明的な英国紳士でもあったので,現地人の中からも優秀な者を抜擢し,英国に留学させることにした。

それらの者は,英国流の「統治」を学び,そして帰国した。彼らは,将来,植民地政府の役人として植民地の統治のために活躍することが期待されていた。そして,クラウド総督の期待に反することなく,刻苦勉励して更に勉強を重ね,統治の手法の中でも内部統制について完全に理解するようになった。

中には現地人の若い者に対して指導をすることができるレベルにまでなった者もあった。Aはそのような者の一人だった。クラウド総督は,Aの働きに大いに満足していた。そして,植民地の財務管理のための官僚として登用することにした。Aとその家族は大抜擢だといって喜んだ。

Aは,クラウド総督の期待に反することなく,極めてまじめに職務を遂行した。クラウド総督は,このことにも満足していた。

あるとき,Aが,上司(隣の植民地からやってきた士官)Bに対して,「内部統制の遂行を任されたので,関連する重要書類を点検したい」と申し出た。それは,財務処理上の疑問点が次々と判明したからだった。

すると,Bは,「機密書類を見せるわけにはいかない。」と冷たく言い放った。

Aは,「内部統制のためには,書類の正確性や真正性を点検しなければならない。」と食い下がった。

すると,Bは,腰からピストルを引き抜き,銃口をAに向けながら,「おまえらは被支配階級だろうが。被支配階級は統制されるべき対象であり,統制の主体ではない。そんなことは英国留学でちゃんと学んだはずだと思っていたのだが,とても残念だ。」と言い,視線を微動だにすることなく引き金を静かにひいた。室内に硝煙が漂った。

翌日,島中が大騒ぎとなり,反乱寸前の状態となった。

反乱しようとした現地人兵士達もあることはあった。しかし,それらの者は,士官階級によって構成された精鋭部隊による磨きぬかれた作戦行動によって,極めて迅速にことごとく殺された。

Aの美しい妻と娘達は暴行された上で殺され,Aの親族の多くも虐殺され,生き残った者ははるか遠くの孤島に逃れた。

そして,島中に重い沈黙がのしかかることとなった。

数日後,クラウド総督が民衆の前に現れた。そして宣言した。

「植民地においては,総督のみに統制権がある。内部統制は,総督の統制権に寄与するものでなければ反逆行為とみなす。反逆者は,どのように有能な者であったとしても,植民地の統制を侵害する者として直ちに処刑する。」

植民地の人々は,黙って頭を垂れているしかなかった。

そして,更に何年かが過ぎた。

さて,このようにしてクラウド総督が本国を離れている間,実は,英国では大変なことが起きていた。政敵である貴族が国王のお気に入りとなって優勢となり,クラウド総督が裁判にかけられることになってしまったのだ。罪名は,「植民地における失政を隠すため巨額の賄賂を贈った」というものだった。

数ヶ月して,本国から新たな総督が赴任し,クラウド総督は職を解任され,英国に送還されることになった。

その護送のための軍艦の船中においてクラウド元総督を警護する役割は,隣の植民地の総督の命により派遣された精鋭の士官達に任されていた。

クラウド元総督は,極めて頭脳明晰であったので,そのことの意味を正しく察することができた。そして,

「何人といえども統制には従わなければならない。これは内部統制でも同じであり,異なる統制が並存することは決してあってはならない。それは,国王に対する反逆を意味する。しかし,余は,貴族であり,極めて高貴な一族の一員である。余は,帝国の支配を維持し,統制を貫徹することに成功した。そして,余の気高い名誉と業績を奪うことは地球上の誰にもできない。神の神はいない!」と大声で叫び,愛用の軍用サーベルを抜くと,陽光にまぶしく輝くそのサーベルを両手でしっかりと握り,一息つくと自分の首をかききって果てた。

それをとめようとする者は誰一人いなかった。

その後,新任の総督が作成した報告書と護送のための軍艦の艦長が作成した報告書を一読した国王は,「そうか」とだけ述べた。

ただし,その艦長が作成した報告書には「クラウド元総督は,赤道を通過中に船内で病死したため,名誉ある軍人として水葬に付した」と記載されていた。

この報告書は,その後,公式文書として王室図書館の中に収められ保存されることとなった。

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