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2010年7月31日 (土曜日)

顔認証システムを応用した電子商業宣伝広告看板

この関連のことは既に記事に書いた。

 顔認証システムを使った商業宣伝広告実験を複数の駅で開始
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-db1c.html

現行の個人情報保護法がひどくできの悪い法律であり全面改正すべきだということも何度も述べてきたので,重ねて書かない。

消費者庁は,この種の装置を設置して利用する場合,消費者が情報収集機能を開始させるスイッチを装備することを義務付ける法律案を早急にとりまとめ可決させるべきだ。停止スイッチだと既に情報が取られてしまっている可能性が非常に高いので,情報をとられることを同意する者だけスイッチを押すようにすることを法的に義務付ることがポイントだ。また,既に情報を取られてしまっている可能性のある場合には,消費者が自分の手でそのデータを即時消去できるようにするためのスイッチの設置を義務付けることが望ましい。

また,現行の法解釈論としても,隠れて情報収集すること及びそのための措置を設置すること(stealth deployment)は,詐欺その他の不正な手段による個人情報の取得に該当するとして解釈すべきだろう。このことは,消費者向けの商品に付されるRFIDタグに関する総務省と経済産業省のプライバシー保護ガイドラインに明記されていることだが,RFIDタグだけではなく,その他全てのデバイスについても同様のルールが適用されるものと考えるのが正当な法解釈論だ。

現実の顔認証電子看板(多数)を調べてみたところ,それが電子的な顔認証によるデータを取得する機能があることを示す表示が極めて小さく,存在しないのに等しいので違法であるといえる。少なくとも画面と同じくらいの大きさの表示をすべきだと解する。

なお,開発者としては,画像データは数値データを取得した後に自動的に消去されるようになっているから個人情報の取得にはあたらないと説明しているようで,その説明自体は正しい。しかし,画像データが消去された場合,数値化されたデータの客観性を担保するための証拠となるデータが存在しないことになるから,その数値データを集積した統計結果もまた検証不可能なものだというしかない。この場合,検証不可能なものであり,何ら客観性はないということを明確に説明した上でその装置を売るのであれば問題はないかもしれないが,検証不可能であるのに検証可能であるがごとく説明して販売するとすればそれは欺瞞的な商売として違法である可能性があることも既に指摘したとおりだ。欺瞞的にならないようにするためには,検証可能な装置とするしかなく,検証可能な装置とするためには画像データを保存しておき,あとで人間が逐一チェックするという方法をとるしかない。要するに,ここにも自己矛盾が存在する。

いずれにせよ,製造者及び設置者が説明するとおり,画像データを保存せずに自動的に評価され数値化されたデータだけを集積する装置であるとすれば,それはかなりアバウトな装置であるといわざるをえないわけで,そのようなアバウトな玩具に大金を支払う経営者の感覚を私は理解することができない。収支報告を見る限りそんなに余裕がある状態だとは思えないので,もっと良い設備投資の仕方があるのではないかと思う。

(余談)

かつてPOS端末による需要分析能力等が大々的に宣伝され,それに基づいてほとんどすべてのコンビニなどでPOS端末が導入された時代のことを思い出すべきだ。POS端末はもちろん万能ではなかった。「これだけでは駄目だ」ということで顔認証商業宣伝広告看板が導入されるのだろう。しかし,結局,同じことではないか。

歴史を学ぼうとしない人が増えている。悲しいことだ。

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