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2010年7月27日 (火曜日)

アラブ首長国連邦:国防上の理由でBlackBerryを禁止または監視

下記の記事が出ている。

 BlackBerrys pose 'security risk' say UAE
 BBC: 26 July 2010
 http://www.bbc.co.uk/news/technology-10761210

要するに,BlackBerryによる機密データの流出などがあった場合に国際的裁判管轄権が及ばず処罰や容疑者の拘束ができないことは国防上問題だということのようだ。国際的にビジネスを展開している企業では常に同じ問題が生ずることになるので,今後は,約款上,常に相手方国の主権と裁判権に服し,かつ,相手方国の法令が全面的に適用されることを認め,かつ,いかなる不逮捕特権や賠償額の減免も主張しないという条項を入れるでもしない限り,国防上の理由による禁止が増加するのではないかと予測される。つまり,製品やサービスを国外に輸出する企業は,約款によって法的に防衛することが困難になってくるかもしれない。

このことは,パブリッククラウドコンピューティングサービスなどでは非常に複雑で解決不可能な課題を提供していることになる。同一のサービスについて複数の異なる(たいていの場合相互に矛盾する)約款を競合して適用することはできない。「統制」がそれ自体として合理的なものでなければならないという原則に反するからだ。あるひとつの「系」の中に異なる「統制」が共存することはできない。クラウドベースのスマートフォンやPDAなどでも全く同じことが言えるだろう。

従来,この種の問題は,民事上の損害賠償権や差止請求権が国際的に及ぶ範囲の問題としてとらえられてきたし,それ自体としては今後も同じなのだが,平時と戦時が常に共存するインターネット上では,単なる民事訴訟法上の国際的管轄権の問題のようにみえるものが国防上の問題に直結してしまうことが多々あり得る。

おそらく,アラブ首長国連邦がとった措置は,長期的な視点にたつと,国際関係が大規模に変化する萌芽の一つなのではないかと考える。

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