Amazon が印税率を引き上げたことにより,大手出版社との間で著名な著者の奪い合いが勃発
下記の記事が出ている。
Amazon E-Book Venture Stirs Fuss in Publishing
New York Times: July 22, 2010
http://www.nytimes.com/2010/07/23/business/media/23author.html
電子時代の印税をめぐる著者vs.出版社の戦い、Amazonと大手出版社Random Houseの間で有名作家の取り合い騒動
hon.jp: 2010-07-23
http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=1647
アマゾン、Kindle電子出版に「印税70%」の新オプションを発表、6月末開始
engadget日本版: Jan 20th 2010
http://japanese.engadget.com/2010/01/20/kindle-70-6/
この問題を日本に引きなおして考えてみると,日本の出版社の通常の印税率は1割未満なので,Amazonの7割という印税率と競争する限り,日本の出版社に勝ち目は全くない。日本の出版社もAmazonと同様に70パーセントにしなければぜんぜんはなしにならない。
なお,日本でも既にAmazonでの出版手続代行のようなビジネスが開始されている。
注意しなければならないことは,次のとおりだ。
1) 印税率は70パーセントだが,著者は,電子出版コストの一部を負担することになっているので,売り上げの70パーセント全部が著者の手元に入るわけではない。
2) 日本の税務当局がどのように課税するかが全くもって不透明だ。へたをすると,二重課税のような問題が発生することになりかねない。
3) 手続代行者を介して電子出版をする場合,手数料がかかる。実際の利益とは無関係に手数料がかかるので,現実にはぜんぜん売れなかったという場合(←きちんとした英語の著作でない限り,まず売れないと考えたほうがよい。),手数料を支払い,Amazonの出版コストを負担すると大幅な赤字になってしまうということがあり得る。
4) 3の場合に,著者に不払いがあると電子出版著作物の著作権を差し押さえられることがあり得るが,その場合には日本の民事執行法の手続によらないで競売されてしまうことがあり得る。ちなみに,日本の著作権法に定める著作者人格権のみを保有していたとしても(←人格権なので競売できない。),海外(特に米国)では全く意味をなさないことが考えられる。なお,著作権の国際的競売に関して,現時点ではまともな研究成果は存在しない。
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