Webでテレビを視る時代がやってきた
既にテレビ番組をストリームで視聴することが普通になってきているのだが,テレビ放送それ自体をWebでやる時代がやってきだようだ。おそらく主流になるだろう。下記の記事が出ている。
Google launches smart TV service
BBC: 20 May 2010
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/10132877.stm
Webテレビは,特に大きなコストをかけなくてもオンデマンドの番組表を構成できてしまうところが優れている。また,放送番組の受信や記録のために特別の装置を要しない。
ところで,古臭い硬直した頭脳しかもっていない人は,「Webテレビ」という言葉を耳にすると,すぐに「通信と放送の融合」と言い出すだろう。そのような概念を用いるそれ自体が空虚であるし無意味であることは,このブログで何度も触れたとおりだ。要するに,「コンテンツをインターネットで配信すること」の一つのパターンであるのに過ぎない。そこでは何も融合していない。単に,放送局(無線電波)を用いたコンテンツの配信という産業領域がどんどん衰退し続けているという社会現象が発生しているのに過ぎない。個人的には,「通信と放送の融合」という虚妄から抜け出ることができないようなタイプの人は,さっさと引退してもらいたいと思っている。百害あって一利なし。
さて,概念に関する議論はさておき,Webテレビが主流となることによる結果(社会・経済的影響)は非常に大きなものとなる可能性がある。
放送局の倒産,放送設備を製造・販売する会社の倒産,従来的な手法による番組コンテンツ製作会社の倒産,商業宣伝広告製作会社の倒産,テレビ受像機を製造・販売する会社の倒産に伴い,比較的大量の失業が発生する。それに代わる新たな工業生産等は発生しない。それどころか,パブリッククラウドによりWebテレビコンテンツの配信がなされるだろうから,大概のPC製造・販売企業は倒産する。そして,世界は,総じて厳しい経済不況の状況へと向かうことになるかもしれない。
ちなみに,コンテンツについてなのだが,若い世代では英語のコンテンツを普通に利用することが可能な人が増えているので,英語のコンテンツを提供する外国のWebテレビ放送局が結局生き残ることになるのではないだろうか?
日本の企業としては,(国民の中のただの一人も電波で放送されるテレビ番組を受信・受像しなくなったとしても)法律に基づいて受信料を徴収し続けることができるNHKだけが残るということになるかもしれない。
ちなみに,Googleの戦略が思惑通りに進むとも全く思っていない。世界各国での独占禁止法関連の訴訟,プライバシー侵害訴訟,コンテンツの著作権侵害訴訟,労働問題への対応,迂闊なコンテンツ配信による宗教的紛争の発生,サイバー攻撃への対処などにあけくれ,消耗し続ける日が来ることが約束されている。
| 固定リンク
コメント
丸山さん こんにちは
おっちゃるとおりだと思います。
利権Aと利権Bのせめぎあいですね。
しかも,利権の「融合」ではなく,どちらか一方が他方に飲み込まれてしまうだろうということが最初から誰の目にも明らかなので,「大義名分」をかざしてどうにか生き残ろうとしているだけです。それを知らないで,馬鹿まじめに「融合」を唱えている学者や評論家は,太鼓もちであるかお人よしであるかのいずれでしょう。とにかく,全部虚構です。そのような虚妄の説を信じ込んでしまっている学生等もあるようですが,とても可愛そうです。人生を誤ってしまいますね。
ラッダイト運動は,歴史の教科書の中にしか残っておりません。
露骨な書き方をすると顰蹙をかうかもしれないと考えて控えておりましたが,あえて書くことにします(笑)。
投稿: 夏井高人 | 2010年5月21日 (金曜日) 09時34分
Aという情報伝達手段とBという情報伝達手段が融合するということはないですよね。ただし、Aという情報伝達手段に利権を持つ一派とBという情報伝達手段に利権を持つ一派の融合というのはあるかもしれません(笑)。利権の融合ですから、国家レベルで専門委員会を開催し、調整をすべき課題なのかもしれません(笑)。
冗談はさておいて、私もコンテンツ及びその伝達をどのようにコントロールするのか(手法や程度も含めて)、というのは重要な課題だと思っています。
既存の商業モデルの変化というのも合わせて考えなければならないのでしょうね。
投稿: 丸山満彦 | 2010年5月21日 (金曜日) 09時01分