ロマンシング詐欺首謀者に対する個人情報暴露が横行
下記の記事が出ている。
ロマンシング詐欺首謀者、ネットは個人情報暴露で“逆襲”
IT Media: 2010年05月27日
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1005/27/news054.html
この事件の容疑者は逮捕されたばかりで,有罪判決を受けたわけではない。あくまでも机上の理論としては,全額を被害弁償することにより起訴猶予や執行猶予付きの判決もあり得る。
また,実刑の有罪判決となったとしても,被告人としての名誉権が奪われるわけではない。
かつて,ロス疑惑の亡三浦氏は,有罪判決となったあとも,新聞社を相手に,名誉毀損を原因とする多数の損害賠償請求訴訟を次々と提起し,その大半が勝訴で終わっている。つまり,有罪と確定した者であっても名誉権はあるのであり,その侵害をする者は,マスコミといえども巨額の賠償責任を負わされることがあるということになる。
どういうわけかマスコミはこの事実をあまり報道しようとしないし,自己批判をしたとの報道に接したこともないからあまり知られていないかもしれない。しかも,上記の記事においても,むしろ個人情報暴露を煽るかのような論調のようにも読めるから,そのセンスを疑いたくなる。
ところで,マスコミのように強力な組織と潤沢な資金があって有能な弁護士を雇うことができるところならまだしも,一般人を被告として名誉毀損を原因とする損害賠償請求訴訟を提起された場合,弁護士を雇うことは難しいことが多いだろう。だから,まず間違いなく敗訴し,賠償を命ずる判決を受けることになってしまうだろう。このことをきちんと理解しておく必要がある。マスコミは潤沢な資金をつぎ込み,有能な弁護士を多数雇って亡三浦氏が提起した損害賠償請求訴訟において徹底的に防戦したのにもかかわらず,ほぼ全面的に敗訴しているのだ。
ちなみに,匿名で書き込みをした場合でも,その行為が名誉毀損罪を構成する場合には,告訴することによって警察が強制捜査をしてくれるから,匿名がひっぱがされ,書き込みをした者を明確に特定することができる場合がある。発信者情報開示請求がうまくいかなくても,被害者として告訴すれば良いわけだ。だから,匿名の書き込みだから大丈夫と楽観するのは馬鹿だ。
ネット上の電子掲示板でいい気になって書き込みをするのは良いが,あとになって損害賠償責任を負わされるかもしれないというリスクをよく考えるべきだ。
なお,誤解のないように言っておくと,私は,このようなロマンシング詐欺のような違法行為を許す気は全くない。その犯人は,厳罰に処するべきだと考えている。しかし,その加害者がどういう人物であるかについてはあまり興味がないし,ましてその加害者の経歴や私生活については全く興味がない。刑事判決における量刑は,基本的に法益侵害の大小・程度・性質または法益侵害の可能性の大小・程度などを重視すべきだと考えている。
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