クラウドコンピューティングには未解決の法律問題が山盛りいっぱい
下記の記事が出ている。
Cloud Service Users Face Confusing Legal Landscape
PC World: May 18, 2010
http://www.pcworld.com/businesscenter/article/196578/cloud_service_users_face_confusing_legal_landscape.html
このブログで既に何度も触れてきた論点ばかりなのだが,これらの法的論点を合理的に解決する方法はない。なぜなら,基本的に,クラウドコンピューティングサービスプロバイダだけが「統制」を有しており,その国際的裁判管轄権及び準拠法が優先的に適用されると理解するしかないからだ。要するに,クラウドコンピュータの利用者は,常に「統制」を持ちようのない「奴隷」としてのみ生存し得る。したがって,パブリッククラウドがシェアを拡大すればするほど,世界中でごく数名の女王と圧倒的多数の奴隷だけで構成される社会が形成されることになる。
ちなみに,パブリッククラウドが大規模に普及すると,これまで個人用PCやミドルクラスのサーバを製造・販売していた企業の少なからぬ部分が売り上げ大幅減少により倒産のやむなきに至る可能性がある。必要なくなってしまうからだ。
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コメント
丸山さん こんにちは。
私の基本は,サバイバルですので,少し田舎に居を構え,雑草に近い種類の地味なランを栽培しながら,どうにかこれらのランを食用にできないものかと研究を重ねています。花は観賞価値の低いものが多いですが,強くて増えそうです。ラン科植物以外の山野草でも全く同じです。
ちなみに,東京や上海のような巨大都市は非常に脆いです。壊れるときには一瞬に近い速度で全崩壊するでしょう。
パブリッククラウドも同じです。
投稿: 夏井高人 | 2010年5月21日 (金曜日) 09時27分
日本でパブリッククラウドを推進している人の中にも、アジアの途上国向けに打って出ていこうという人がいます。日本がでなければ、別の国がでるのもわかります。とはいうものの、本当に人間世界としてそれでよいのか、ということで悩みます。
企業の最適行動というミクロの世界とグローバル全体のための最適行動というマクロの世界。パブリッククラウドの問題の難しさはそこにあるのかもしれません。そこに、一人間の出世欲や名誉欲といったマイクロな世界もあり、まさにクラウドなのでしょうかね。。。
国連が実質的に機能できないという状況(過去から未来永劫そうなのかもしれません)の中で、どのような社会をつくっていくのか、これまたパブリッククラウド(ココログもパブリッククラウドかなぁ。。。)を利用して情報発信をしていく矛盾しているような状況ですね。
最近太宰治を読んでいます。何か、共感できるところがあるのです。別に自殺をするつもりはありませんが、夏井先生のおっしゃる通りで先行き明るい未来というわけにもいかないように思っています。
投稿: 丸山満彦 | 2010年5月21日 (金曜日) 08時43分
丸山さん こんにちは。
夏井です。
パブリッククラクドの導入を推進すべきだと考えている人の中には,ご指摘のような「自国でサーバを開発・構築・運営するだけの力のない小国や途上国にこそ売り込むべきだ」と考えている人が結構たくさんあるようです。悪意はないかもしれません。
でも,国家主権と国防の基本を根幹から侵害する行為だと自覚すべきだと思います。基本的に,国連憲章違反の行為になりますね。
ただし,「世界の警察」をもって自認するようなタイプの国の人だと,基本的に国連憲章など絶対に読まないし,自分(だけ)が世界で一番であり,「何をやっても世界のためになっている」と信じ込んでいるかもしれません。そこらへんに,外資企業及びそこに勤める従業員の心理やものの考え方などの基本的な相違を発生させているのではないかと思います。
しかし,侵害行為は侵害行為なので,自己の行為のもつ意味というものを正しく自覚・認識すべきだと思います。
ただし,現実的には,世界中からごうごうたる非難を浴びるまでは「何で問題にされるのか?」を全く理解することができないかもしれません(例:GoogleのStreet View Carによる自動的な無線LAN通信傍受の件)。
投稿: 夏井高人 | 2010年5月21日 (金曜日) 07時27分
夏井先生、現在のような日本の場合はまだよいほうかもしれません。自国内にデータセンタを作っていけますので。。。
しかし世界約200弱の国があるなかで、日本のように恵まれている国がいくつあるでしょうか。。。
現在でも軍事面や資金面を通じて他国の事実上の支配を受けている国が多いのかもしれませんが、情報処理分野においても他国または一企業の支配下におかれる国が出てくるかもしれません。。。
投稿: 丸山満彦 | 2010年5月21日 (金曜日) 06時33分
丸山さん こんにちは。
私がいくら異論を唱えても,現実には「目の見えない人」が圧倒的多数を占めているし,また,日本国の政治システムでは,そのような人じゃないと権力者にはなれないようになっているので,かなりひどく虚無感が漂いますね。
とはいえ,(現時点では守秘義務のあるので明確に書くことができませんが)今後,クラウドがらみの重大事故や致命的な脆弱性などがどんどん明るみに出てくる予定です。
また,世界のまともな法律家達に対して,問題意識を伝え,検討するようにずっと呼びかける努力を重ねてきました。その結果,次第にまじめに考える法律家が増えてきました(日本では,残念ながら駄目です。)。外圧のようなものを期待できそうなレベルになりつつあります。
そのようにしてクラウドに関するひどくマイナスの情報がどんどん提供され,誰もがしらけるレベルになってくれれば,そのほうが良いでしょう。
どなたも現実に痛い目にあうまでは,何も理解しようとしないようですので・・・
このように現実に痛い目に合うまでは誰かからの警告に耳を傾けないという姿勢は,自己過信の極みですね。ソクラテスではありませんが,「無知の知」の本当の意味をよく考えるべきだろうと思います。
さて,政府のクラウドについてですが,日本国の企業が運用し,日本国内に物理サーバがあるプライベートクラウドシステムを採用するならまだしも,日本国政府の基幹部門,国防,警察などの業務処理のために他国のパブリッククラウドシステムを日本国政府が利用するとしたら,まさに国賊ものだと思います。
この問題は,国家主権と国防そのものの問題であり,WTO等の自由貿易協定等とは本質的に全く無関係なことです。
米国連邦政府は明らかにそのように考えておりますから,米国連邦政府や軍などが米国以外の国のクラウドシステムを利用することなど絶対にあり得ません。どの国でも全部同じです。
でも,日本の為政者がそのことをちゃんと理解できているとは到底思えません。
日本は,悲しい国ですね。
投稿: 夏井高人 | 2010年5月20日 (木曜日) 18時58分
政府すらもそういう団体のサービスの奴隷となっていしまっている場合、政府による統制もできなくなってしまうかもしれませんね。。。国会でパブリッククラウド排除の決議をしようとしても実行の段階でとまってしまうかもしれませんね。。。
投稿: 丸山満彦 | 2010年5月20日 (木曜日) 18時05分