DNSSECは国家主権を侵害するか?
下記の記事が出ている。
DNSSEC: the internet's International Criminal Court?
Register: 7th May 2010
http://www.theregister.co.uk/2010/05/07/dnssec_and_geo_political_implications/
現在の世界秩序は,「国家主権」という概念を前提に構築されている。
しかし,現実の世界は国境や国家権力とは無関係に存在している。
ここにギャップが生ずる。
要するに,特定の地理的領域に対して物理力をもって統制する組織を承認したとしても,ネット上の世界はその物理的領域とは関係なく存在し得るものであり,しかも,そこにおいてはその物理的領域に対して物理力をもって統制する組織とは別の組織または個人が実効的な統制を有することがしばしばある。
このことは経済(国際取引)の領域ではごく普通のこととして存在しており,税や輸出入の統制という物理的領域と切り離せない問題に関しては確かに国家主権が優越ではあるけれども,その国際取引それ自体はその国家とは無関係に成立し機能している。
要するに,世界は,全体として過渡期にあるのだろうと思う。
「世界全体に対する実質的な統制を誰が握るか」というタイプの問題であり,おそらくそれは国家ではない。統制を維持するためにはそれなりの資金(予算)が必要なのだが,国家の「税」という仕組みではない方法を用いてそれを調達・維持するための課金システムは既に存在している。
18世紀以降続いた「主権国家」という概念枠組みは,実質的には相当部分で崩れている。何か別の世界へと移行しつつある。それを認めたくない人と認めざるを得ないと考える人との相違が存在するのに過ぎない。事実は事実だ。
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