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2010年4月 4日 (日曜日)

指宿 信『法情報学の世界』

これまで法情報学の分野においてわが国におけるリーダー的な存在として活躍してきた指宿教授の新著が刊行された。

 指宿 信
 『法情報学の世界』
 第一法規 (2010年3月25日)
 ISBN-13: 978-4474025370

ざっと読んでみると,内容的としては,これまで発表されてきた関連論文等を体系的に整理し,現時点での状況に合うように補正をした上で加筆をしたものだ。

法情報学が対象とする領域は非常に広い。この1冊の刊行に至るまで長年月をかけて調査・研究が重ねられ,その蓄積があればこそ本書が成立したのだと評価すべきだろう。

本書中に含まれる事項はいずれも重要なものばかりなのだが,私が一番貴重だと考えるのは第3章の中に含まれている未公刊判決の問題ではないかと思う。この問題は,現時点でも基本的には解決されていないから,日本国民は裁判情報に対してアクセスする権利が否定されているのと同然の状態にあり,しかも,そのことを知らないという悲劇的な国民であることになる。この部分の元となった論文が最初に書かれたのは2001年のことなのだが,現時点でも,そしてこれから将来においても,すべての法律家はこの問題と直面し続けることになるだろう。

さて,日本においては法情報学の分野における体系的理論書が存在しなかった。もちろん,法情報学の分野における優れた書籍,論文等は多数存在する。しかし,体系書が存在しなかったのだ。

本書は,実質的な意味において日本最初の体系書となると考える。

本書の刊行は,日本の法情報学の歴史において,非常に重要な出来事としてとらえることができるのではないかと思う。

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