国連:ロシアが実質的な提案者となった新たなサイバー犯罪条約を起草すべしとの提案を否決
EUのサイバー犯罪は,実質的には米国と英国を主軸とする国際秩序の維持を前提としている。これに対しては,低開発国から国家主権を反故にするものだとの反発があり,ロシアや中国からも米国FBIの捜査権限が国境を越えて自国に及ぶことに対する非難が繰り返されてきた。そして,国連による新たなサイバー犯罪条約起草の提案がなされていたが,否決されたようだ。
UN rejects Russian cyber-crime treaty
Thinq.co.uk: 21 apr 2010
http://www.thinq.co.uk/news/2010/4/21/un-rejects-russian-cyber-crime-treaty/
UN rejects international cybercrime treaty
Computer Weekly: 20 April 2010
http://www.computerweekly.com/Articles/2010/04/20/240973/un-rejects-international-cybercrime-treaty.htm
さて,「サイバー犯罪」は,警察に関する事項のように見える。
しかし,本当は,それは「ものごと」の半面しか見ていないのと同じことだということは,私が教えている明治大学法科大学院の「サイバー法」受講者であれば既に理解している。しかし,おそらく,それ以外の人々は,「ものごと」の本質に気づくまでに更に相当の年数を要することになるだろう。あまりに簡単なことなのだが,強固な固定観念が認識と洞察の能力を曇らせてしまうからだ。
平時と戦時が常に共存する世界に突入してしまった以上,これまでの基本概念をいったん全部捨ててしまい,自分の頭で整理しなおすことのできる者だけが正しい理解を得ることができる。
とは言っても,国家主権を希薄化してしまうと,主権国家の連合体として構成されている国連自身の自己否定にもなってしまいかねないので,国連の場において,国家主権を超えた国際的なサイバー犯罪対応を実質的な内容とする条約が成立可能なのかどうかは,かなり疑問だ。
うがった見方をすることが許されるとすれば,サイバー空間がバーチャルなのではなく,国連とそれを支えている様々な基本哲学のほうがバーチャル化してしまっていると理解するほうが素直なのではないかとも思われる。
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コメント
高橋郁夫先生 こんにちは。
「国際秩序」というものは,もともと本質的にそういうものなのだろうと思います。
日本の高校における世界史や政治経済等の科目とか大学における政治学等の科目においても,そろそろ欺瞞的な隠蔽や虚構をやめるべき時代になったのではないかと思います。即物主義だけが次世代の人々を救うことになるだろうということは間違いありません。
投稿: 夏井高人 | 2010年4月24日 (土曜日) 04時34分
>サイバー犯罪は
実際は、ブダペスト条約については、CoEの覇権の示威行為に見えてきました。
>平時と戦時が常に共存する世界に突入してしまった
ストラスブルグでは、サイバー戦争という言葉が一回もでてこなかったということもありました。
2000年ころに議論した条約やそれに対するアンチテーゼが、時代との関連性を失っているということでしょうね。
投稿: 高橋郁夫 | 2010年4月23日 (金曜日) 22時24分