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2010年4月27日 (火曜日)

個人情報保護・プライバシー保護に関する新刊書

個人情報保護に関する新刊書2冊の寄贈を受けたので,丁寧に読んでみた。

1つ目の本は,次の本だ。

 堀部政男編著
 『プライバシー・個人情報保護の新課題』
 商事法務(2010年4月10日)
 ISBN978-4-7857-1749-0

この書籍は,なかなか読みごたえがある。EUの個人データ保護指令後に新たな論点として議論されてきた課題について,それぞれの分野の専門家が論述したもので,現時点ではこの分野における最良の書と言えるかもしれない。法科大学院の学生にもぜひとも読んでもらいたい一冊だと思う。

特に詳密な事実調査の結果を踏まえて書かれている第6章「監視・追跡技術の利用と公法的側面における課題」(新保史生氏)は,この分野の業務に携わる者にとって必読と言えるだろうと思う。

なお,この本にはクラウドなどの最新の課題についての章は含まれていない。おそらく,この本が企画された時点では,EUの報告書も公刊されていなかったはずであり,新課題としてとらえるには新しすぎる問題だと考えられたのだろうと推定する。他にも最新の論点が多数存在するはずだが,それは未来に出版される書籍に期待するしかない。

2つ目の本は,次の本だ。

 瀬戸洋一,伊瀬洋昭,六川浩明,新保史生,村上康二郎
 『プライバシー影響評価PIAと個人情報保護』
 中央経済社(2010年3月30日)
 ISBN978-4-502-99230-8

この本は,PIAの概説書だ。PIAについてはまだあまり周知されているとは言いがたいが,私自身が様々な場面で過去何年かにわたりPIAの実務に携わってきた経験によれば,日本では,「無駄なコストだ」と考える経営者があまりにも多いために普及していないのだという結論に達している。つまり経営者としての基本ができていない。

この本が出版されたからといってそのような事態が改善されるとは到底思えないが,企業内で良識ある人々が経営陣を説得したいと考える際には的確な論拠を提供してくれる心強い味方になってくれる本なのではないかと思う。

今後の課題としては,形式的・儀礼的にPIAを実施しても何の意味もないので,いかにそれを実質化するかというあたりにあるように思う。それは,例えば,環境影響評価でも言えることだ。

日本では,単に形式だけ整えればそれでよろしいという空気が強すぎ,ときとして虚無感を覚えることがある。日本の美徳の一つである「様式美」というものが形骸化するとこういう結果を招くことになる。

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