蛮勇をふるうISPはいるか?
「勇気あるISP」は存在するらしいということを某氏から教えていただいた。
勇気あるISP募集? 児童ポルノのブロッキング、通信の秘密が壁
Internet Watch: 2010/3/26
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100326_357166.html
国の機関(警察,公安委員会,自衛隊などを含む。)が同じことを実施しようとする場合,一定の違法性阻却事由が認められる場合を除き,根拠法令が必要となる。
民間企業が実施しようとする場合,関係者全員の同意または一定の違法性阻却事由の存在が適法性要件となる。現時点で,違法性阻却事由として一般的に承認されているものとしては,例えば,ふくそうの防止のための場合や情報セキュリティ確保上の必要性がある場合などがあるが,これらの場合であっても,単に「必要性」があるというだけで違法性阻却になるわけではなく,「相当性」の要件も満たさなければならない。つまり,必要性から実施される具体的な処理がそれ自体として合理的かつ適法なものであり,その必要性を満たすために発生する権利侵害を最小限のものにとどめるようなものであって,全体として一定程度以上に「相当」と評価されるものでなければならない。
この点で,全てのパケットを補足・解析してしまうタイプの傍受技術にはかなりの問題があるといえるし,原則として,電気通信事業法違反行為として厳しく処罰されるべき行為になると理解すべきだろう。また,もしそのような行為を推奨する者がいるとすれば,もちろんそのような者は日本社会から追放されなければならない。「どうしてもやりたいのであれば,どこか独裁主義の国に行ってやってくれ」と言いたい。「ライフログ」でも基本的には同じことなのだが,金銭的利益の獲得のためには手段を選ばず,それによって多大の被害が生ずることを理解しようとしないという「おばか」的な風潮がネットビジネスやネット関連研究者の世界に存在していることには怒りを感ずる。
ちなみに,同じレベルで問題となる電子技術及びそれを応用したビジネスモデルの一つとして,ディープパケットインスペクション(Deep Packet Inspection: DPI)を使ったターゲット広告がある。このDPIは,Googleのようなパブリッククラウドでは自動的にしかも簡単かつ徹底的にできてしまうのだが(←パブリッククラウドの利用者ができるという意味ではなく,パブリッククラウドのオーナーが実行可能という意味。),クラウドでなくても実現できるような仕組みがいろいろと考えられている。その大半は,スパイウェアの一種だと認識されており,セキュリティソフトによって駆除されるようになっている。また,ビジネスモデルとしても,違法行為または犯罪行為と判断するしかないものが圧倒的に多いと考える。しかし,ハードウェアでそれを実現している場合,それを駆除する方法がないことがある。現実に問題となった例としては,Phormの事例がある。過去の記事だが,日本語の記事としては比較的わかりやすいので,下記の記事を紹介しておくことにする。
オンライン広告技術"Phorm"で問われるプライバシー侵害の境界線
マイコミジャーナル: 2009/04/22
http://journal.mycom.co.jp/column/eutrend/014/index.html
実は,Phormと同じようなことをやろうとしている者が存在しているということを示唆する記事をみかけたことがあったのだが,現時点では削除されてしまっているらしく,見つけることができなくなっている。
[このブログ内の関連記事]
Phormがブラジルと韓国に進出?
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/phorm-e798.html
英国はEUのプライバシー保護基準を満たさない
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-8e73.html
EU:英国のPhormによるディープパケットインスペクションを違法と判断
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/phorm-8b52.html
英国のBT,VirginなどがPhormと契約-モニタリングの時代へ?
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/btvirginphorm-a.html
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