総務省:「IDビジネスの現状と課題に関する調査研究」報告書
総務省のサイトで,下記の報告書が公開されている。
「IDビジネスの現状と課題に関する調査研究」報告書の公表
総務省: 2010年4月8日
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/27585_2.html
よくまとまっているように読める。
しかし,定義のところから間違っているので,その定義を前提とする論述が全て間違っている。
この報告書では,ID(Identification)を「インターネット上のシステムやサービスにおいて、その利用者を識別するもの」と定義している。これは,国際的に共通した定義だし,国際的に承認されている定義だろう。その常識に近い定義が間違っているというのが私の見解だ。正しくは,「インターネット上のシステムやサービスにおいて、その利用者を識別することのできる確率」としなければならない。
要するに,識別可能か不可能かという二者択一的な理解は根本的に間違っており,あくまでも確率論しか存在しないと理解するのが正しい。
私は,このような理解を(国会議員や政府担当者等を含め)一般レベルの知識・経験・能力に基づいて仕事をする人に対してまで求めようとは思わない。
しかし,いやしくも研究者である限り,徹底的に考え抜いた上で,そもそも定義それ自体の正当性を根源から疑ってかかるくらいでなければ,将来研究者として大成することはない。
そして,同一性識別に関する限り,現在流布されている概念や定義の大半が間違っているというのが現時点での私の見解だ。「同一性」や「本人」などの構成要素をきちんと正しく定義することは至難の業に属する。
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