Steven Levy, Hackers
仕事のために参照をする必要があって,Steven Levyの『Hackers』を読み直した。初版は1984年に刊行されているから,4半世紀前の書籍ということになる。当時は,「ハッカー」の定義をめぐってネット上でも現実世界でも常に議論があったことを思い出した。しかし,この4半世紀の間に,世界は全く異なる方向へ進んでしまったということがよく判る。
この書籍は,最初はハードカバーで出版されたし,日本語の翻訳書も出版されたのだが,現時点では2001年に英語のペーパーバックとして出版され直した版じゃないと店頭で入手することができないようだ(←もちろん,ネット上の書店やオークションサイトであれば別だ。)。
Hackers - Horos of the Computer Revolution
Steven Levy
Penguin Books (2001)
ISBN 0-14-100051-1
現時点においては,「ハッカー」という語は,「ネット犯罪者」と同義語として定着してしまっている。もちろん,そのような用法に厳しく反対する人々も大勢存在するし,本来の意味でのハッカーとしてのプライドをもって重要な仕事をし続けている人だって少なくない。が,現実は現実だ。
私が興味をもつのは,コンピュータシステムや情報ネットワークによって拡張された諸々の技術的能力が,その「使い手」によって,どのように異なる結果をもたらすか,という点についてだ。このようなテーマで私がやってきた検討や研究は,犯罪心理学にも社会心理学にもプロファイリング学にも属しない。純粋に,「人間を知る」というテーマの部分問題でしかない。「人間を知る」ための手法は,現実世界でのアプローチを含め,様々な方法をとることができるし,そうしなければならない。ただし,予断と偏見は一切捨てなければならない。事実を事実として認める姿勢が求められるのだ。
サイバーな空間であっても,(現在のところ)加害者は生きた人間であるので,「人間を知る」ということなしに,その空間で生起する出来事を正しく理解することができない。それと同時に,この空間もまた一つの「生態系」のようなものだと認識することが可能であるので,そのように理解する場合には,生態系としての構造解析もまた必要になってくる。
これからの時代にサイバー法をめざす若い研究者(またはその卵)の諸氏には,人間や自然界そのものに対する幅広い教養と深い洞察とが求められることになるだろう。その中にはほとんどすべての生物に共通する構成要素である遺伝子とその機能に関する認識・理解も含まれる。大いに頑張って勉強してほしい。
少なくとも,外国の法令や判決文などを読んで,それだけで全部理解したような気分になることだけは絶対に避けて欲しい。
さて,私は随分と齢をとってしまった。それゆえ,私の能力には(体力的にも資金的にも)大きな限界がある。
若い世代の活躍に期待したい。
| 固定リンク
« ネット上の掲示板に「わいせつ行為をして警察に逮捕された」という趣旨の虚偽内容の書き込みをしたことが名誉毀損罪に該当するとして,26歳の男が逮捕される | トップページ | URL短縮サービスow.lyは危険がいっぱい? »
コメント