クラウドコンピューティングサービスの提供を受ける契約の問題点
SaaS等の利用契約を含め,クラウドコンピューティングサービスの利用契約について,次第に問題が明らかになってきたようだ。それは,契約締結上の自由の範囲が極めて狭いという問題(古くからある附従契約または符合契約の問題)だ。
Are SaaS/Cloud Computing Vendors Offering Questionable Contracts?
internet.com: March 8, 2010
http://itmanagement.earthweb.com/features/article.php/3869156/Are-SaaSCloud-Computing-Vendors-Offering-Questionable-Contracts.htm
一般に,パブリッククラウド上で提供されるアプリケーションは,利用者用にカストマイズされたものではなく,金太郎飴のように同じもののコピーが提供されるだけなので,これは当然の結果ということになるだろう(利用者毎に完全にカストマイズされたサービスの提供がなされる場合,サービスそれ自体はプライベートクラウド的ではあるが,物理システム(仮想マシン)はパブリッククラウドそのものとして提供されるので,パブリッククラウドの一種またはパブリッククラウドをベースにしたハイブリッド型と理解すべきだろう。)。
要するに,一般に,パブリッククラウド上ではサービスの定価販売のような状態が発生し,利用者の側での契約の自由は基本的にはなくなってしまう可能性がある。
ここでもまた,パブリッククラウドコンピューティングサービスにおける利用者の主体性や独立性や自由は無視または軽視されることになる。
なお,誤解のないように付言しておくと,個人利用者がパーツの提供のようなかたちでサービスの提供を受けるだけであれば,パブリッククラウドであろうと何であろうと,それはそれで構わないと考えている。私自身も「自前でブログシステムを自前のサーバ上に構築し自分で運用するよりはマシだ」と考えて,仮想マシンサービスの一種であるココログのブログサービスを現に利用している。サーバとシステムの保守・運用のために貴重な人生の時間を割きたくない。また,機密にすべきデータは絶対にサーバ上に記録せず,基本的には公開するデータのみをアップロードしているので,不正アクセス等を気にする必要も全くない(←強いて言えば,データの改ざんだけを注意していれば良いことになるし,その点は,ココログのサーバ側のセキュリティを一応信用している。コモンクライテリアが機能するのはこの部分だけだと思っている。)。そのような場合には,定価販売的な契約であることが利用者にとってもメリットのあることが多いだろうと思う。私が問題にしているのは,基本的には,(営業秘密や個人情報等を含め)重要な情報を多数保有している企業が,パブリッククラウドの上に企業情報及び業務の全てを委ねてしまうような場合のことだ。
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