« 米国:改正されたマサチューセッツ州プライバシー保護法が2010年3月1日に発効 | トップページ | 日韓の誹謗中傷合戦 »

2010年3月 2日 (火曜日)

EU:Googleに対し,ストリートビュー画像を6ヶ月毎に全部消去するように要求

EU政府は,Googleのストリートビューがそれ自体としてプライバシー侵害的なものであるとして,ストリートビューのシステムに既に格納されている全てのデータを6ヶ月毎に消去するよう要求する方針を固めた模様だ。

 EU privacy body wants changes to Google Street View
 REUTERS Canada: Mar 1, 2010
 http://ca.reuters.com/article/technologyNews/idCATRE61O6EC20100301

 Europe Pushes Google Over Street View Data
 eWeek: March 1, 2010
 http://www.eweekeurope.co.uk/news/european-authorities-push-google-over-street-view-data-5557

 European Union puts the thumbscrews on Google Street View maps
 Gadling: Mar 1st 2010
 http://www.gadling.com/2010/03/01/european-union-puts-the-thumbscrews-on-google-street-view-maps/

同じことは,Google以外の企業が提供する類似サービスでも言えることだ。

従って,日本企業を含め,類似のサービスを提供する企業は,事業の撤退を視野に入れるべき時期に来ている。少なくとも,欧州において同様のサービスを提供すれば,当然のことながら,Googleと同じ運命を経験することになり,投資が全て無駄になる。だから,こういうことには最初から投資してはならないのだ。

なお,日本国政府は,EUの個人データ保護指令に定める第三国に対する個人データの移転制限との関係で,日本の個人情報保護法制がEU個人データ保護指令とコンパチブルであると説明している。その説明を維持しようとする限り,日本においても,政府として,「ストリートビューの画像全部の消去」及び「類似サービスを提供する企業に対するサービスの提供停止及びデータ全部の消去」を求めるというのが政策論的には正しい選択だということになるだろう。そうでなければ,日本国の法制は,EUの個人データ保護指令とコンパチブルではないということになってしまうだろう。

ちなみに,ストリートビューは,国防上及び治安維持上も大きな問題がある。犯罪者やテロリストを利するところが余りにも大きすぎると言わざるを得ない。


[追記:2010年3月6日]

その後のニュースを読んでいると,要するに,Googleのストリートビューそれ自体を禁止するわけではないが,画像データを保有可能な期間を6ヶ月と限定し,6ヶ月以内に完全に消去せよということを要求しているようだ。もしGoogleがストリートビューを継続したいと考えるならば,6ヶ月毎に同じ場所の映像を撮影し直し続ける必要が生ずることになる。そのようなコストの負担にGoogleが耐えられるかどうかはかなり疑問だ。結局,コストを考えると,Googleは撮影場所を絞るか全面撤退するかのいずれかの選択を迫られることになるだろうと思う。

ある意味で,「うまいやり方」を考え出したものだと感心してしまう。(笑)

なお,関連記事を追加しておく。

 Does Google Street View see a future in Europe?
 CNET: March 5, 2010
 http://news.cnet.com/8301-1023_3-10464351-93.html


[追記:2010年3月6日]

中康二さんからコメントを頂戴した。ご指摘のとおりの部分があったが,できるだけ元の本文を残したままで追記で修正するというスタイルを維持したいので,部分的に修正することにした。元のタイトルと本文中で「6ヶ月以内」とあった部分を「6ヶ月毎」と書き換えた。

EUが問題としているのは,Googleがデータを1年も保存していることは(個人データの利用目的と照らして)「長すぎる」ということであり,より短い期間である6ヶ月ならば我慢の範囲内だということのようだ。このようなEUの見解は,日本国の個人情報保護法における「利用目的」と実際の利用との関係についての判断(法解釈)にも大きな影響を与え得ると思われる。例えば,犯罪防止のための街頭でのビデオ録画画像の保存期間に関する法的解釈論において,警察によるものとセキュリティ会社などの私企業によるものとで微妙な差が出るなどのことが発生し,少なからぬ影響を与え得るものではないかと思われる。

なお,より正確と思われる記事がRegisterに掲載されていたので,追加しておく。この記事によれば,Googleが欧州におけるストリートビューのサービス提供をやめてしまう可能性があるということになりそうだ。

 Street View threatens to throw Eurostrop
 Register: 4th March 2010
 http://www.theregister.co.uk/2010/03/04/street_view_eu/


[このブログ内の関連記事]

 フィンランド:Googleストリートビューを違法であるとして,個人データ保護官と警察による調査が進められている
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/google-99e2.html

 スウェーデン:Googleストリートビュー(の担当者)がプライバシーを侵害した罪で有罪となる可能性
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/google-f6d4.html

 スイス:Googleのストリートビューがプライバシーを侵害しているとして訴訟へ
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/google-dc63.html

|

« 米国:改正されたマサチューセッツ州プライバシー保護法が2010年3月1日に発効 | トップページ | 日韓の誹謗中傷合戦 »

コメント

中康二さん こんにちは。

一応手直ししてみましたが,欧州におけるGoogleの今後のことの予測となると,(私は預言者じゃないので)本当はよく判りません。(笑)

今後も何かお気づきの点があれば,ご指摘いただければ助かります。

PCに向かって仕事をしながら息抜きとして片手間に書いているブログなので,思わぬ間違いや勘違いなどもあるかもしれません。

よろしくお願いします。

投稿: 夏井高人 | 2010年3月 7日 (日曜日) 14時31分

早速のご対応素晴らしいですね。
Googleの問題に対しては、今後も注視したいです。情報発信に期待いたします。

投稿: 中康二 | 2010年3月 7日 (日曜日) 14時12分

中康二さん コメントありがとうございます。

「追記」と入れ違いにコメントを頂戴したのかもしれません。

この記事の本文のほうを書いた当時,他のニュース報道なども読んでみて,こんな論調だったので本文のような書き方をしました。今日になって,他の調べごとをしている間に,追記にあるような記事にネット中の記事が修正されつつあることに気付き,追記を書きました。まだ正式文書の写しを手に入れていないので,この追記の記述でも不正確かもしれません。あわててもしょうがないので,少し時間を置きながら正確な記事とするために更に追記を重ねたいと思います。ご指摘ありがとうございました。

なお,Googleに対する姿勢については,EU加盟各国で温度差がありますね。非常に強い姿勢をとっているところでは,今後,行政処分,警察による捜査または民事判決等で強制的にGoogleが追い出されるようなことが発生する可能性は十分に残されていると思います。Googleの経営陣がもっと謙虚で低姿勢になっていれば事態の動き方も相当異なっていたのだろうと想像するのですが,現在のような経営者の態度だと事態はますます悪化するだろうと予測しています。

投稿: 夏井高人 | 2010年3月 6日 (土曜日) 22時01分

夏井先生はじめまして。オプティマ・ソリューションズの中康二と申します。

この記事は、誤解を与える内容になっているのではと思います。このEUの要請により、Googleがストリートビューを停止することもないと思いますし、単に生データを6ヶ月で廃棄せよということではないかと思います。

再度、ご確認いただければと思います。

※なお、Googleが本人が意識しない間に個人情報をどんどん集めまくっていることについては、私も危惧を共有しております。今後も情報を楽しみにしております。

投稿: 中康二 | 2010年3月 6日 (土曜日) 21時07分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 米国:改正されたマサチューセッツ州プライバシー保護法が2010年3月1日に発効 | トップページ | 日韓の誹謗中傷合戦 »