EFFが,スマートメーター(Smart Meters)は重大なプライバシー侵害を招くとの見解
電力やガスなどのエネルギーを効率的に分配し,かつ,家庭用の太陽光発電なども流通させようということで,世界各国において,スマートグリッド(Smart grid)の研究・開発と運用が開始されている。Smart Meterは,そのための仕組みの一つだ。ところが,スマートグリッドは私生活に関する情報が電力会社やガス会社等によって集中管理されることになる結果,その安全性とプライバシーの保護に関し疑問視する見解がある。EFFは,プライバシー侵害の懸念を更に強めているようだ。
New "Smart Meters" for Energy Use Put Privacy at Risk
EFF: March 10th, 2010
http://www.eff.org/deeplinks/2010/03/new-smart-meters-energy-use-put-privacy-risk
なお,一般論だが,プライバシーの問題とセキュリティの問題は同じ問題の別の側面だと考えたほうがわかりやすい。例えば,スマートグリッドが専用回線ではなくインターネット経由で運用される場合,どんなに強固なセキュリティを構築したつもりでも結局破られてしまう危険性があることは否定できない。なにせ,これまで一度も破られたことのないセキュリティ技術は世界に一つも存在しないのだが,インターネットの場合,加害者がリモートで脆弱性要素を探知・分析できてしまうから,安全性が損なわれる危険性が非常に高いといえる。
日本政府もスマートグリッドの推進の方針できているが,単に産業振興というだけでは駄目で,安全性確保の面でも徹底的に研究を進めるべきだし,そのための十分な予算を組むべきだと考える。
社会の重要インフラが破壊されてしまったのでは,児童手当が支給されても学校が機能しない状態が発生したり,高速道路を利用できなくなってしまったりする可能性があるし,普通の道路でも信号機が作動しなくなって大混乱が生じ,電車はもちろん全面停止するといった事態が発生し得る。つまり,リモートで国家の社会・経済機能を破壊してしまうだけのサイバー戦争を(場合によっては一個人が)しかけ,それを成功させてしまうことが可能となってしまうだろう。
何でもかんでもインターネットベースでモノゴトを考える時代(ユビキタスの思想)は終わりにしなければならない。
[関連記事]
電力会社はスマートグリッドサイバーセキュリティに2015年までに210億ドルを投資
CNET Japan: 2010/03/01
http://japan.cnet.com/release/story/0,3800075553,10446562,00.htm
[このブログ内の関連記事]
スマートグリッドにおけるプライバシー侵害の危険性
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-cdf9.html
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