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2010年2月18日 (木曜日)

自宅にサーバを立ち上げ,商業通信の媒介をして広告料収入を得ていた中国人留学生が逮捕

中国人留学生が自宅にサーバ2台を設置し,電気通信事業法に定める届出をしないまま,そのサーバを用いて海外の利用者が日本のプロバイダに接続するための通信の媒介をし,広告手数料収入を得ていたことが,電気通信事業法違反に該当するとして逮捕された模様だ。

 電気通信事業法違反:ネットサーバー無届けで運営 容疑の留学生逮捕 /埼玉
 毎日jp: 2010年2月16日
 http://mainichi.jp/area/saitama/news/20100216ddlk11040276000c.html

自宅でサーバを立ち上げるといっても,そのサーバがターミナルとなっており,通信の当事者としてネット上に登場しているだけで,他人の通信の媒介を一切していない場合には,そもそも電気通信事業者に該当しない。

この事件では,海外から日本のプロバイダへの通信接続をするための媒介を業として(反復継続して)営むためにサーバを設置し運用していたという事実をとらえ,電気通信事業者であると判断されたものと推測される。

ところで,この留学生は,就学のためのビザしか有しておらず,就労や企業経営のためのビザの発給を受けていないだろうと思う。したがって,電気通信事業法云々よりも,日本国における不法滞在を理由として国外退去処分となる可能性が高く,そのことのほうがよほど大きな問題かもしれない。また,この中国人留学生が稼いだお金については,所得税等を一切納税していないだろうと推測される。この点も問題になるかもしれない。なお,この中国人留学生がどのような種類・内容の通信の媒介をしていたのかは不明だ。

ちなみに,日本で電気通信事業法違反の罪があまり問題とならないのは,通常は自前のサーバ上でネットビジネスを営むのではなく,電気通信事業者であるサービスプロバイダのサーバを借り,そのアプリケーションなどを利用しているからだろうと思われる。このような場合,通信役務の大半はサービスプロバイダ側が提供しており,そのサーバの利用者は,通信の媒介について意識することなく単純にネット取引などのビジネスを営んでいることが多い。

そして,このような場合においては,仮に形式的には電気通信事業者と認定される可能性のあるような要素を含んでいるとしても,サービスプロバイダが既に電気通信事業法の定める要件を満たす適法な電気通信事業者であり,かつ,そのような者として適正に通信役務を提供しているのである限り,そのサービスプロバイダの一利用者としてネット取引をしている者については,(少なくとも電気通信事業法との関係では)特に違法性を考慮する必要がない場合が圧倒的に多いだろうと思わる。

なお,あくまでも一般論だが,パブリッククラウド環境において,当該パブリッククラウドから「他人の通信の媒介」をするために必要なアプリケーションやリソースの提供を受け,実質的に電気通信事業者としてのビジネスを当該クラウド上で営んでいる者(当該クラウドの利用者)があると仮定した場合,日本国の電気通信事業法の適用の関係ではどのような法解釈がなされるべきかについては未解明の部分が多い。緊急に検討すべき課題の一つなのではないかと思われる。要するに,現行の電気通信事業法は,パブリッククラウドという環境を想定していない時代に制定されたものなので,もしかすると何も対応できていないかもしれないということになる。

[参考:電気通信事業法抜粋]

第2条(定義)
 この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
一 電気通信 有線,無線その他の電磁的方式により,符号,音響又は影像を送り,伝え,又は受けることをいう。
二 電気通信設備 電気通信を行うための機械,器具,線路その他の電気的設備をいう。
三 電気通信役務 電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し,その他電気通信設備を他人の通信の用に供することをいう。
四 電気通信事業 電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業(放送法(昭和25年法律第132号)第52条の10第1項に規定する受託放送役務,有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送,有線放送電話に関する法律(昭和32年法律第152号)第2条第1項に規定する有線放送電話役務,有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送及び同法第9条の規定による有線テレビジョン放送施設の使用の承諾に係る事業を除く。)をいう。
五 電気通信事業者 電気通信事業を営むことについて,第9条の登録を受けた者及び第16条第1項の規定による届出をした者をいう。
六 電気通信業務 電気通信事業者の行う電気通信役務の提供の業務をいう。

第16条(電気通信事業の届出)
1 電気通信事業を営もうとする者(第9条の登録を受けるべき者を除く。)は,総務省令で定めるところにより,次の事項を記載した書類を添えて,その旨を総務大臣に届け出なければならない。
 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては,その代表者の氏名
 二 業務区域
 三 電気通信設備の概要(第44条第1項の事業用電気通信設備を設置する場合に限る。)
2 前項の届出をした者は,同項第1号の事項に変更があつたときは,遅滞なく,その旨を総務大臣に届け出なければならない。
3 第1項の届出をした者は,同項第2号又は第3号の事項を変更しようとするときは,その旨を総務大臣に届け出なければならない。ただし,総務省令で定める軽微な変更については,この限りでない。

第42条(電気通信事業者による電気通信設備の自己確認)
1 電気通信回線設備を設置する電気通信事業者は,前条第1項に規定する電気通信設備の使用を開始しようとするときは,当該電気通信設備(総務省令で定めるものを除く。)が,同項の総務省令で定める技術基準に適合することについて,総務省令で定めるところにより,自ら確認しなければならない。
2 前項の規定は,電気通信回線設備を設置する電気通信事業者が第10条第1項第3号又は第16条第1項第3号の事項を変更しようとする場合について準用する。この場合において,前項中「当該電気通信設備」とあるのは,「当該変更後の前条第1項に規定する電気通信設備」と読み替えるものとする。
3 電気通信回線設備を設置する電気通信事業者は,第1項(前項において準用する場合を含む。)の規定により確認した場合には,同項に規定する電気通信設備の使用の開始前に,総務省令で定めるところにより,その結果を総務大臣に届け出なければならない。
4 前三項の規定は,基礎的電気通信役務を提供する電気通信事業者が前条第2項に規定する電気通信設備の使用を開始しようとする場合について準用する。この場合において,第2項中「前条第1項」とあるのは,「前条第2項」と読み替えるものとする。

第44条(管理規程)
1 電気通信事業者は,電気通信役務の確実かつ安定的な提供を確保するため,総務省令で定めるところにより,第41条第1項又は第2項に規定する電気通信設備(以下「事業用電気通信設備」という。)の管理規程を定め,電気通信事業の開始前に,総務大臣に届け出なければならない。
2 電気通信事業者は,管理規程を変更したときは,遅滞なく,変更した事項を総務大臣に届け出なければならない。

第185条(罰則)
 第16条第1項の規定に違反して電気通信事業を営んだ者(第9条の登録を受けるべき者を除く。)は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

[追記:2010年2月28日]

関連記事を追加する。

 ネットサーバー無届け運営:銀行カードを詐取 容疑で中国人留学生を再逮捕 /埼玉
 毎日jp: 2010年2月26日
 http://mainichi.jp/area/saitama/news/20100226ddlk11040255000c.html

[追記:2010年3月26日]

関連記事を追加する。

 中国人留学生が夢中になったネット犯罪の魔力とは?
 産経ニュース: 2010.3.26
 http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/100326/stm1003262134011-n1.htm

[追記:2010年5月16日]

関連記事を追加する。

 【法廷から】ネット犯罪に手を染めた中国人留学生の代償
 産経ニュース: 2010.5.13
 http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/100513/stm1005132213018-n1.htm

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