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2010年2月 8日 (月曜日)

位置情報と仮想現実

位置情報については以前から議論がある。法律家の多くは,ほとんど異論なく個人データに該当すると考えているが,ビジネス界や技術開発に携わる人々の大半が法律家ではないし,法律家の意見を聞いてからビジネスや実験を開始することは滅多にないので,結局,ある程度までビジネスや研究開発が進行してしまったところで議論が発生し,「いまさらやめられない」という圧力によって正当な議論が圧殺されてしまうことが普通だ。このことは,特許実務でもそうで,一般に,特許審査官は「何が公序良俗違反か?」ということを考える機会に乏しいし,「法令違背だけでは公序良俗違反にならない」と単純に考えてしまう人が圧倒的多数なので,現実にそれを実施したらたちまち違法状態を生成してしまうような発明に特許がどんどん付与されてしまうことにもなる。事実そうだった。

位置情報に関する特許をちょっとだけ調べてみると,既に数え切れないほどの数の特許が成立していることを理解することができる。例えば,下記の例を一読すれば,そのことが一目瞭然だ。

 Method and system for location tracking (United States Patent 7366522)
 http://www.freepatentsonline.com/7366522.html

今後,位置情報を応用し,仮想現実と結びつけたビジネスがたくさん出てくることになるだろう。その中には完全に匿名化処理が行われており,ほとんど問題のないものもあるけれども,一見して「これは駄目だ」と断定できてしまうものもある。実に玉石混交の世界。

他方で,目の前の現象面だけに囚われてしまう人が圧倒的に多いように思う。例えば,プライバシー保護を主張する法律家にしても,当該システムや当該ビジネスにおけるプライバシー保護しか視野の中に入っていない。だから,当該ビジネスが破綻した後のことや,当該ビジネスをとりまく環境という要素の中での社会的意味といった趣旨での考察がどうしてもおろそかになってしまうことになる。仮にそのような深い考察がなされたとしても,その考察の結果を受ける人々が浅はかな場合には,一体何を主張されているのかを理解することができないから,結局徒労に終わってしまい,ぜんぜん評価されないことになるという悪循環もある。

とまあ,愚痴を言っていても仕方がない。

基本的には,研究者のモデリング能力をもっと向上させなければならない。もちろん,具体的・個別的な事例の検討をおろそかにしてはならない。しかし,知見や教訓というものは,個別・具体的な事象そのものからではなく,それを一般化・抽象化したモデルの中からのみ得られるものなのだ。

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