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2010年2月23日 (火曜日)

椙山敬士『著作権論』

椙山先生から著書『著作権論』を頂戴したので,読んでみた。

 『著作権論』
 椙山敬士
 日本評論社(2009年12月20日)
 ISBN978-4-535-51750-9

目下議論の的となっている「フェアユース」の部分も面白かったが,私が一番興味深く読んだのは,第3部第2章「知的財産権の共有」の部分だった。この章は,2007年にL&Tに掲載された論文に加筆されたもので,民法,著作権法及び特許法における共有の法的コントロールを比較検討している。

「共有」は古代ローマ時代からある法的概念の一つであり,民法の初歩で学ぶ基本的事項の一つだ。民法を忘れてしまう知的財産法学者が少なくないので妙なことになってしまうことになるが,そのような困った傾向に警鐘をならすものとして,この章は貴重ではないかと思う。民法を忘れてしまった人は,もう一度勉強し直してもらいたいし,この本でも指摘されているとおり,ローマ法に遡って深い考察を継続してもらいたいものだと思う。

また,知的財産権の分野において,「共有」は非常に重要な法的概念になっていると理解している。例えば,パテントプールの法的性質について,普通は特許権の共有はなく,契約に基づく共同利用だけが存在している。しかし,本当にそのように理解して終わりにしてしまってよいかどうかについては再考を要するように思っている。共有の対象を素直に観察した場合,実質的には特許それ自体を共有しているのであり,ただ法形式だけが契約に基づく共同利用であると理解することも不可能ではないからだ。このことをどのように理解するかによって,もしパテントプール上で法的紛争が生じた場合にもその解決に差が出ることがあり得る。この分野に興味をもつ若い世代の研究者には是非ともしっかりと研究してもらいたい法的課題の一つだ。

その他,過去の論文に加筆・修正を加えてまとめたものであるけれども,全体として著作権法の現代的課題について考えるべき素材を数多く提供する書籍として貴重であると思う。

一読をお勧めする。

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