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2010年2月21日 (日曜日)

Google Bookにもっと反対すべきなのは著者ではなく技術者?

私はかねがね「データベースによる世界の支配」という現象について警鐘を鳴らしてきた。あまり賛成者はなかった。理解できないのだろうと思っていた。実際,イメージできる人の数は限られていたと言ってよい。だれも「自分が理解している世界」が「虚像」だと決め付けられるのはいやだから,当然の結果といえば当然の結果かもしれない。

しかし,「虚像」を「虚像」として認識し,ものごとの本質に即して意見を述べる人の数は増えているのではないかと思う。

Google Bookに関して,すこぶる素直な意見をみつけた。基本的に正しい意見だと思う。

 Google Books和解案にいちばん強力に反対すべきはテクノロジ部門だ–その意外で深刻な理由
 Tech Crunch: 2010年2月17日
 http://jp.techcrunch.com/archives/20100216gary-reback-why-the-technology-sector-should-care-about-google-books/

私は,「データベースによって世界がどのように支配されるのか」については,説明を求められれば説明してきたのだけれど,「よくわからん」という反応が多かった。すぐにピンときてくれたのは,MSとGoogleとAmazonの関係者だけだった。彼らは世界を支配する側にまわるための覇権争いをしている最中なので,ピンとこなければ担当者として失格かもしれない。(笑)

ちなみに,データベースによる支配は,普通の人が予想可能な範囲を超えてはるかに深刻なものだと考えている。このことに気付き,私費を投入して研究を始めてから3年くらいになる。あと7年はかかると思っていた。つまり10年計画。しかし,事態の進行は恐ろしく早い。中途半端でも研究成果の一部を公表し続けるしかないかもしれない。ただし,研究予算が枯渇してしまったので,研究続行を断念せざるを得ないかもしれないような状況にたちいたっている。まあ,それでよいのかもしれない。未来の奴隷には知恵など必要ない。へたに知恵をもつと,不幸になってしまうだけだ。

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コメント

watanabe8760さん こんにちは。

Web検索の「独占」という問題は,事実に関する問題と法律論とを分けて考えるべきだと思います。

事実としての独占を防止する方法はないだろうと思います。単なる自由競争の世界であり,利便性の優劣で決せられる問題だろうと思います。

法律論としての独占は,別問題です。

検索のシェアを獲得しているだけでは独占禁止法違反だとは言いにくいのですが,それと広告ビジネスとが結合され,更に他のクラウドサービスなどとの結合がなされると,優位な地位を利用した不正な市場支配と評価されることがあり得ます。その場合,明らかに独占禁止法上の問題が発生し得ることになります。目下,その危険性等があまり表面化しないのは,(Googleの経営陣が法秩序を理解しようとしない人々のようであることは一応措くとしても)Gメールサービスをはじめ,Googleが通信内容をNSAに提供しているからじゃないかと推測したくなりますね。連邦政府としてもGoogleをスパイとして使うだけの価値がある間は独占禁止法違反の点をとがめることはないでしょう。世の中,綺麗ごとだけでは済みません。しかし,法理論的にはどうかと問われると,独占禁止法違反が問題となり得るような状況を構成する主要な要素は既に発生しているのではないかと推定しています。

また,別の法的問題もあります。

この記事でも明確に指摘されているとおり,違法に(著作権者の許諾を得ずに)孤児著作物のコピーを集積し,それを梃子にして検索能力を高めているとすれば,(検索結果の提供は違法ではないが,それを実現するための手段・手順が違法であるという意味で)ビジネスモデルそれ自体が違法であることになる可能性があるだろうと思います。要するに,この記事の意見が正しいとすれば,盗品をかきあつめ,それを新たな商品のように仕立て直して儲けているのと何も変わらないことになります。これは,違法に個人情報をかきあつめ,そのデータを悪用してターゲットマーケティングをするのと同じくらい違法性の強い行為です。

こういうことを書くと,すぐにネットビジネスや技術開発の可能性を抑圧することになるという批判がやってきますが,違法なビジネスや技術を開発してはならないことは自明のことなので,このタイプの批判は批判それ自体が違法なものだと思っております。自由に開発してよいのは適法なビジネスと技術だけです。

投稿: 夏井高人 | 2010年2月21日 (日曜日) 11時13分

Web検索の独占に対して、歯止めをかける法律・仕組みなどは、現状存在するのでしょうか?そもそも、Web検索のようなあいまいな事象に対して、独占という考え方が適用できるものなのでしょうか?

投稿: watanabe8760 | 2010年2月21日 (日曜日) 10時40分

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