« 米国:サイバー国防を強化するための巨額の予算措置を認める法案が下院で可決 | トップページ | 米国:DellのノートPCの冷却装置に欠陥があるとするクラスアクションの第一審判決が控訴審で取り消され,差し戻し »

2010年2月 6日 (土曜日)

岡田仁志「電子マネーのデータプロテクション-匿名購買の自由と購買履歴の活用の調和」

三省堂本店に立ち寄り,最近の法律雑誌を立ち読みしていたら,NBLに面白そうな論文がいくつか掲載されていたので2冊ほど買って帰った。922号には,電子マネーの関係の論文が掲載されていた。

 岡田仁志
 電子マネーのデータプロテクション-匿名購買の自由と購買履歴の活用の調和
 NBL 922号(2010年2月1日号) 22-29頁

この論文は,通常の現金の場合には,指名債権と異なり,それを使う者を特定するための要素が含まれていないため「匿名性」が維持されているのに対し,電子マネーでは,それが電子的な決済手段であるがゆえに匿名性が維持できないばかりか,データマイニング,ターゲット広告,追跡などに使われる可能性があるという相違点がある点に着目した上で,電子マネーに含まれる個人識別機能について何らかの保護が必要ではないかという提案をする趣旨のもののようだ。

その指摘はまさに正しいと思われる。電子マネーは,現金とはかなり異なる性質を有しており,指名債権の一種であることを本質とするものであり,その債権の存在を証明し,権利の行使・流通のために用いられる電子的な有価証券のようなものだと考えることも可能ではないだろうか。

電子マネーの保護の問題は,従来,主に情報セキュリティの側面から考えられてきたように思われる。そして,その電子的な改ざん,破壊,偽造等の防止が主たる論点だったかもしれない。しかし,この論文の中でも触れられている海外の動向などを踏まえると,一応安全とされている電子的な決済手段全般について,共通の課題として,その利用者の識別とそれに伴う様々な法的課題を考える必要があるのではないかと思った。


|

« 米国:サイバー国防を強化するための巨額の予算措置を認める法案が下院で可決 | トップページ | 米国:DellのノートPCの冷却装置に欠陥があるとするクラスアクションの第一審判決が控訴審で取り消され,差し戻し »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 米国:サイバー国防を強化するための巨額の予算措置を認める法案が下院で可決 | トップページ | 米国:DellのノートPCの冷却装置に欠陥があるとするクラスアクションの第一審判決が控訴審で取り消され,差し戻し »