電子ブックが大判化し競争激化
世界的にみるとAmazonのKindleが優勢な状況が進んでいるが,そのKindleが大判化することになったようだ。そして,他の企業からも大判の電子ブックが投入されるようであり,今後,この分野での競争が激化するものと思われる。
Amazon to take large-screen Kindle global
Sydney Morning Herald: January 7, 2010
http://www.smh.com.au/digital-life/digital-life-news/amazon-to-take-largescreen-kindle-global-20100107-lvbg.html
UK e-reader to challenge Kindle
BBC: 7 January 2010
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8446959.stm
CES: Plastic Logic's Que E-Reader Revealed
PC World: Jan 8, 2010
http://www.pcworld.com/article/186224/ces_plastic_logics_que_ereader_revealed.html
Slim, Large Screen E-Reader Skiff to Debut on Sprint
Wired: January 4, 2010
http://www.wired.com/gadgetlab/2010/01/e-reader-skiff-to-debut-on-sprint/
ちなみに,日本で大判の電子ブックが流行るかどうかは若干微妙なところがある。日本には岩波文庫以来の小型本を愛好する伝統(?)のようなものがあるからだ。文庫本や新書版の書籍は,混雑する通勤電車の中でも読むことができるし,ポケットに入れておいて喫茶店等で読むこともできる。狭い日本には適した方式ということができる。
日本の国土はとても狭い。物理的な面積がそうだというのではなく,この面積の国土に1億以上もの人々がひしめいて生きているのだ。ある学者の説によれば,江戸時代レベルの農業だけに頼って自給自足体制でやっていくとすれば,3000万人程度の人々しか生きていくことのできない国とのこと。このことは人間だけではなく,植物の世界でもそうで,何万年もかけて南方や北方からやってきて定着した非常に多くの植物達が日本国内には共存している。狭い国土の中で共存して生きていくために,矮性の個体しか生きられない。そのため,大陸では随分と大きくなるはずの植物でも日本に自生しているものは小さいことが多い。現代では,食物を輸入することができるし,人間の海を越えた移動も比較的自由になっている。だから,江戸時代と単純に比較することはできない。しかし,東京の現状を見る限り,あまりにも人が多すぎる。3分の1程度に人口を減少させないととても快適な生活環境であるとはいえない。とにかくめちゃくちゃ多くの人間がひしめき,いがみ合い,奪い合いながら生きている。そして,それぞれの個人にとっての自由なスペースと時間はあまりにも乏しい。だから,やはり文庫本的なものしか生き残れないのかもしれない。なお,自室に引きこもってしまうタイプの人々であれば,大判電子ブックの需要もあるかもしれない。
さて,近未来予測をするとすれば,いずれ大判電子ブックは,タブレットPCとしての機能をもつようになるだろう。電子ブックのほうは最初からコンテンツをもっていることになるので,単純にマシンだけ製造して販売する企業は不利な立場にたたされることになるかもしれない。これを挽回するためには,電子ブックのようにして映画を鑑賞したり漫画を読んだりすることのできる電子機器であり,かつ,タブレットPCの機能をもったようなもので対抗していくしかないかもしれない。幸いなことに,日本人の多くは英語の書籍を愛読しているわけではない(←ただし,日本語圏の顧客数を上限とするビジネスで甘んじることになる。このことは朝鮮語圏でも同じ。中国語だけは中華人民共和国の国土だけでも10億以上の規模の市場であり,この数は米国のおよそ4倍に相当する数なので,自足的に市場として成立可能ではないかと思われる。)。
というわけで,今後は,「無償または非常に廉価で多種多様なコンテンツを豊富に利用できること」がこれからの電子機器ビジネスの重要な要素になっていくのではないかと予想する。巨額投資によって新しいコンテンツを開発することが難しくなるので,低コストで古いコンテンツ(または,リメイクしたコンテンツもしくはデジタルリマスタリングしたコンテンツ)を使いまわす時代にならざるを得ない。
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